地元を代表する企業で働き、まちづくりに貢献|#042 古橋 亮さん
聖学院大学大学院 政治政策学研究科 修了
2023年3月21日、聖学院大学ボランティア活動支援センター設立10周年記念『ボランティアの集い』が開催されました。
前半は、開設10周年に合わせて出版された、書籍「共に育つ"学生×大学×地域"―人生に響くボランティアコーディネーション―」の出版記念シンポジウム、後半は在学生・卒業生・教職員による懇親会が行われました。
後半の懇親会の会場では、キノエネ醤油のおしょうゆとめんつゆが来場者にプレゼントされました。
そして、そこでおしょうゆを配付していたのが、今回取材をさせていただいた聖学院大学大学院の修了生、古橋 亮(ふるはし あきら)さんです。
天保元年(1830年)創業のキノエネ醤油株式会社は、今年4月、なんと創業193年を迎えたとのこと!!
千葉県野田市にある本社工場には、100年を越える建物も多く残っていて、そのいくつかは有形文化財にも指定されているそうです。
文化財指定の建物にて受付を済ませ、向かい側のやはり歴史のある建物に案内してもらうと、そこに古橋さんの姿がありました。
歴史と伝統と、新しいチャレンジ!!
ーーこんな素敵なところでお仕事できるなんて素晴らしいですね。
さっそくですがキノエネ醤油さんのご紹介と、古橋さんのお仕事についてお聞かせいただけますか?
キノエネ醤油はご覧の通り、とても歴史のある会社です。
もともとは創業者の名前をつけて『山下平兵衛商店』という会社名で、取り扱っているメインの商品が『キノエネ醤油』でした。
商品名が会社名になったパターンなんです。
キノエネとは甲子(きのえね)で、十干十二支から取っているのですが、60ある干支の一番最初が甲子であり、とても縁起の良い名前です。
キノエネ醤油はもともと業務用のしょうゆや、たれ・つゆなどの製品をメインに取り扱ってきましたが、現在は家庭用調味料の販売などにも力を入れています。
愛知で誕生した「白しょうゆ」の製造を1960年代に関東で初めて開始し、現在では販売、出荷で日本のトップ・シェアを誇っています。
「白しょうゆ」はキノエネ醤油の代表的な製品で、色を鮮やかに保ちながらしっかり味付けをする料理に使われています。
新しい商品の開発にもどんどん挑戦していて、日本野菜ソムリエ協会が主催する『調味料選手権2021』で「白ぽん酢」が総合部門の第3位、「赤ぽん酢」が鍋部門の最優秀賞を受賞しました。
製造三課に所属をし製品の充填業務を管理
しょうゆづくりは、大豆を蒸し、小麦を炒り、麹菌を加えて混ぜ、発酵・熟成させて圧搾します。
ここまでの工程を製造一課が行なっています。
製造二課では製品の調合、調整、殺菌、コンテナ等の大型容器の充填を行います。
そして、100㎖〜1.8ℓ容器の充填、ラベル貼りを行い、出荷できる状態にするのが製造三課で、私は製造三課に勤務しています。
具体的には、販売計画に基づいて充填機械の各ラインの空き状況を確認し、生産のスケジュール調整を行なっています。
NPOの実践をしながらNPO研究
ーー聖学院の大学院で学ぼうと思ったきっかけを教えてください
大学は法学部でした。
父親が市の職員をしていた影響で行政に興味を持ち、行政学・公共政策論を学んでいました。
公共政策の分野では、NPOの存在が注目されてきている時期でした。
私はこうした動きはさらに進むのではないかと思い、大学院に進学して、NPOについて学ぶことを考えました。
当時は行政の側からの視点で、NPOの力をどう活用するかという関心の持ち方でしたが、実際に学び出してからは、NPOの内部の課題に焦点が変わりました。
進学先を決めるために非営利組織に関する書籍・論文を読み漁り、富沢賢治先生がいる聖学院大学大学院に辿り着きました。
しかし私が入学した2012年に富沢先生は非常勤となっていて、論文指導はされないという事実を知りました。
途方にくれていたところ、平 修久先生にお声掛けいただき平ゼミに所属することができました。
大学院ではNPO法人コミュニティ活動支援センター(2014年12月解散)に参加し、第10回のほたる祭りの運営などを行いました。
私が入学した当時は、学部の学生にほたるの飼育、ビオトープの管理をする後継者がいなくなってしまったタイミングでした。
そして、院生の私に白羽の矢が立ち、平先生が担当されていたこともあって、ノーとは言えない状況でした(笑)。
他のボランティア活動団体はもちろん学部生が中心だったのですが、一人だけ私が大学院生で活動紹介や報告などをしていました。
とはいえ、お祭りごとは好きですし、NPOの研究をしながらNPOの実践を行うというのはとても良い経験だったと思います。
修論は「ドラッカーの非営利組織マネジメント理論の再整理」というタイトルで書き、ありがたいことに『聖学院大学総合研究所紀要』にも掲載していただきました。
地元らしい企業で働きたい
ーー大学院修了からキノエネ醤油で働くに至るまでの経緯をお聞かせください
大学院修了後は地元を離れ、6年間市役所で勤務しました。
上司や同僚に恵まれた一方、まちづくりに携わる部署には配属されず、悩んでいました。
そんな折、大学院時代に知り合った釜石市で地域づくりをしているリーダーの方と飲んでいたときに、「地元の方がたいへんだよ。逃げられないから」とその方が言って、その言葉で私のスイッチがカチッと入りました。
この人は、地元という逃げられない環境で戦っているから格好いいんだな、自分もそうなりたいな、と強く思うようになって、そんなタイミングで、私の地元であるこのまちのキノエネ醤油の求人を見つけたんです。
私の祖父は若い頃に桶職人だったのですが、しょうゆ桶の修理などもしていたそうです。
その後、桶職人を辞めてから、あられ煎餅の工場で働いていて、私が小さい頃は、おやつとして、家であられを揚げてくれました。
そのあられの味付け、香り付けにキノエネのしょうゆを使っていました。
求人票を見た瞬間に、そんな私としょうゆとの関係が思い出されて、直感的に縁を感じました。
ーー大学院での学びは現在のお仕事に生かされていますか?
非営利組織は組織の数だけ目的があり、それぞれの組織がその目的を実現するために何をしたら良いのかということがわかりづらい構図がありますが、営利企業の場合は目的がわかりやすいと思います。
大学院で非営利組織のマネジメントを研究し、行政で働いてから営利企業に入ったので、組織の目的がシンプルに整理できた状態で仕事に取り組めていると思います。
キノエネ醤油ブランドを浸透させ、地域を活性化させたい
ーー古橋さんの目標とビジョンをお聞かせください
2025年6月には、キノエネ醤油が食品安全マネジメントシステムの国際規格ISO22000:2018を取得して丸3年になります。
「ISOで決められているから」「審査に合格するために」という思いで目標に取り組んでしまうと、安全性や品質を維持して、向上させるという本来の目的を見失いがちです。
ISOのために目標に取り組むのではなくて、本来やるべきことをしっかりと行っていくことで、結果的に国際規格を十分に満たすという、いわば「ISO22000:2018を使いこなす」状態にしたいというのが当面の目標です。
もう少し長期の目標としては、まだまだ市場にキノエネ醤油ブランドが浸透していないということがあるので、地元を代表するブランドとして認知させ、世界中どこででもキノエネ醤油の製品が手に取れるようにしたいと思います。
大学院や行政で地域づくりを勉強してきて、地域を盛り上げていくということはとても大切なことだと思っています。
野田市は、しょうゆのまちとして有名ですが、まちの魅力はそれだけではありません。
利根川・江戸川に挟まれた立地で、古くは江戸に行く船が必ず通ることから水運の拠点・宿場町として栄えた地域です。
都心から車や電車で1時間ほどの立地にありながら、現在も田畑や里山が残るエリアもあります。
春には、日本さくら名所100選に選ばれる清水公園の桜を楽しむこともできます。
今後、キノエネ醤油をPRしたいのはもちろんですが、野田エリアの魅力も発信していきたいと思います。
一人ひとりを大切にする文化を伝統として残していって欲しい
ーー聖学院は創立120周年を迎えました
今後の聖学院に期待していること、望んでいることをお聞かせください
まずは120周年おめでとうございます。
在学中も体感したことですが、先日の「ボランティアの集い」に参加してあらためて思ったことがあります。
それは、聖学院には学生や生徒一人ひとりを大切にする文化があるということです。
「神を仰ぎ 人に仕う」という建学の精神が根付いているからこその文化だと思います。
ぜひその文化を伝統として残していって欲しいと願っています。
(取材:2023年5月)
ーー ありがとうございました。地域の活性化、ぜひ頑張ってください。
今度、白しょうゆを料理に使ってみます。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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