ビジョンは、生徒に寄り添える教師になること|#071 加藤 詩織さん
聖学院大学 人文学部 日本文化学科 卒業
熊谷 芳郎 先生ら聖学院大学の教員と在校生、卒業生が参加する「教職関係者懇談会」というグループがあり、定期的にオンラインのミーティングが開催されています。
その教職関係者懇談会に積極的に参加されているメンバーの一人を、ぜひ「The story of Seigakuin」で紹介してもらいたい、と推薦されました。
今年、茨城県の教員採用試験に合格し、来年度から正規採用で国語科の教員となる加藤 詩織(かとう しおり)さんです。
現在は、任期付常勤講師として公立中学校で国語を担当しており、授業と部活動指導と大忙しの日々を送られていますが、このたびなんとか取材させていただくことができました。
近況報告や悩み相談の「教職関係者懇談会」
ーー教職関連のオンラインの在校生と卒業生の交流会があり、加藤さんはよく参加されていると聞いています。それはどのような会ですか?
名称は「教職関係者懇談会」と言いまして、聖学院大学の先生、在校生、卒業生がメンバーとなり、オンラインでミーティングをしています。
全部で何人くらいメンバーがいるのかはよくわかりませんが、毎回10名前後のメンバーが参加しています。
ミーティングの内容は参加メンバーの近況報告や悩みごとの相談、時期によっては採用試験や教育実習の話題などで、特にテーマを決めているわけではありません。
実は、今日もこの取材の前にオンラインミーティングがありました。
学校では「要請訪問」と呼んでいるのですが、来週、教育委員会の方や他校の先生が私の勤務校に来校して、研究授業の見学をすることになっています。
そして、なんとその研究授業を私が実施することになっているのです。
生徒の前で授業をしているところを訪問された方々に見てもらうのですが、今からとても緊張しています。
今日のミーティングではもっぱら私の研究授業が話題の中心でした。
次回のミーティングの日時と内容がすでに決まっていて、今度は研究授業を実施した報告をすることになっています。
ミーティングには日本文化学科以外の先生も参加します。
卒業生は主にみなさん先生ですが、私のように中学校の教員もおりますし、今日などは小学校の先生も参加していました。
私は教員3年目となり、少しは慣れましたが、教員として悩むことや相談したいことはまだまだたくさんあるので、この会の存在はとても心強いものです。
教職をめざす「教職クラブAssist'」
ーー聖学院大学の在学中には教職をめざすサークルに所属されていたとうかがっています。どのようなサークルだったのでしょうか?
Assist’(アシスト)という名称の団体で、正確にいうとサークルではありません。
入部当初はサークルだったのですが、私が副代表を務めていた時代に、「設立して時間も経ち学生も集まっている」ということで部に昇格しました。
その際に名前も「教職サークルAssist’」から「教職クラブ Assist’」になりました。
アシストは、在学中の私の一番の居場所でした。
教職をめざす志の同じ学生たちが集う団体で、教育実習に向けて自己紹介の練習や模擬授業などのトレーニング、そして教員採用試験に向けての勉強が主な活動内容でした。
また、教育実習先は基本的には学生が自分で探して、アプローチして、決めなくてはなりません。
そのため、電話のかけ方の練習なども行いました。
そういうときに、とても心強かったのが先輩たちの存在です。
1つ上の先輩は在籍していなかったのですが、2つ上にアシストの創設者の先輩がいて、その先輩の立ち居振る舞いはとても参考になりました。
ヴェリタス祭では玉こんにゃくを販売
教職をめざす活動ではありませんが、アシストの思い出で印象に残っているのはヴェリタス祭(大学祭)の出店のことです。
アシストとしての初めて出店で、何を販売しようかとみんなでアイデアを出し合いました。
そのときに最終候補に残っていたものの一つがプロテインでした。
筋肉ムキムキの先輩が大好きだったのがプロテインで、プロテインを販売したいと言い出したのです。
でも、大学祭でプロテイン販売なんて、あまり聞いたことがありませんよね。
もう一つの候補は玉こんにゃくでした。
玉こんにゃくを串に3つくらい刺して、鍋に突っ込んで味噌や醤油で煮て味をつけるのです。
こんにゃくもプロテインを含んでいるということで先輩には納得してもらって、アシストのお店は玉こんにゃくの販売となりました。
後夜祭の頃は結構寒くなり、玉こんにゃくは温まるのでよく売れるんです。
たちまち人気商品となり、最終的にお店は黒字で、焼肉屋で打ち上げができたほどでした。
今も続いているかどうかはわかりませんが、玉こんにゃくは好評だったので、お店は後輩たちに引き継がれて、私たちが卒業後も出店されていたと聞いています。
卒論は泉鏡花の『高野聖』研究
ーー授業や先生など、アシスト以外の大学在学中の思い出を教えてください
先生でインパクトがあったのは濱田 寛 先生です。
たしか『中国文学』の授業だったと思うのですが、とにかく90分ぶっ通しで勢いよくしゃべりっぱなしなのです。
そして、それがとても面白くて、先生も楽しそうなんです。
濱田先生の授業が、私自身の理想の教員像に与えた影響は大きいですね。
せっかくだから友だちと一緒に面白い科目をとろうと言って、『エクササイズ』の授業など実技系の科目もいくつか履修しました。
『生け花』の授業は、中でも特に楽しくて盛り上がりました。
最終的には、費用はかかるのですが雅号を取得することもできました。
ゼミは熊谷先生のゼミでした。
熊谷先生は授業がとても丁寧だったことを覚えています。
『国語科教育法』の授業では、定期的に読書レポートが課題で出されるのですが、毎回、一人ひとりにしっかりと赤字でコメントを入れて返却してくれるのです。
先生からコメントで褒められていたりすると、うれしくてモチベーションが上がります。
私も生徒のレポートに同じようにできたらいいなと思うのですが、1クラス30名いるので、とてもじゃないけれどできない状況です。
そう考えると、熊谷先生は本当にすごいなと思います。
それから、卒業論文は必須ではなかったのですが、書いたらご褒美があるよと先生に言われて書くことにしました。
テーマは泉鏡花の「高野聖」です。
「高野聖」が作品として完成する前の未発表の鏡花の作品が2つあると言われているのですが、その作品との比較を研究して論文を書きました。
中学生時代からの夢は教員になること
ーー加藤さんのお母様は女子聖学院短大の卒業と聞きました。進路選択におけるお母様の影響はありましたか?
母は女子聖学院短大を卒業して幼稚園教諭をしていましたので、その影響は大いにあります。
教育のお仕事に興味を持ったのは完全に母の影響です。
小学生の頃は私も幼稚園教諭になろうと思っていました。
しかし、中学2年生のときに出会った先生の影響で、中学校の先生になりたいと思うようになりました。
その先生はやはり国語の先生だったのですが、生徒に寄り添ってくれる優しい先生で、授業もとても楽しくて、親身に相談にものってくれました。
その先生によって私の教員としてのビジョンは明確に描かれて、それ以降、ぶれていません。
私の得意な科目は「国語」と「生物」だったのですが、理系はちょっと私にはハードルが高かったので、「国語」の教員免許が取れる大学ということで、聖学院大学に辿り着きました。
数ある大学の中から聖学院を選んだのはやはり母の影響があったからだと思います。
国語には「現代国語」と「古典」と「漢文」とありますが、特に現代国語と漢文が好きです。
現代国語でも"説明文"はあまり得意ではなくて、好きなのはやはり "小説"です。
中学の授業は現代国語が多いのですが、古典、漢文の単元になるとわくわくしてしまい、ついしゃべりすぎてしまいます。
卒論が泉鏡花であることも、濱田先生の『中国文学』の授業に関心があったのも、思えば、そうした素養が私にもともとあったのかなと思います。
生徒から近寄ってきてくれたときにやりがいを感じる
ーー教員として勤務されていての課題とやりがいについてお聞かせください
今、一番たいへんだなと思うことは、休める時間がないということです。
現在、中学2年生と3年生と合わせて5クラス担当しているので、授業のコマ数が多く空きコマがほとんどない状況です。
授業が多い曜日では、空きコマが1コマしかないこともあります。
もともと授業の多い国語を担当していることに加えて、「道徳」や「総合」の授業の手伝いもあります。
もちろん授業準備をしなくてはいけないわけですが、授業準備をいつするのかといえば、空きコマの時間と放課後です。
しかし、放課後は放課後で吹奏楽部を指導しています。
土日に大会の引率をすることがありますし、地域の祭で演奏することもあります。
昨年は担任を持っていたので一層忙しかったのですが、今年は副担任なので、昨年よりは少し余裕があります。
逆に、やりがいが何かといえば、生徒が近寄ってきてくれたときはうれしいですね。
例えば先日、ある生徒のことを授業中に「この作品のこんなところに気がついた生徒がいます」と匿名で誉めました。
そうしたら、授業終了後に誉めた生徒が、ニコニコして私のところに近づいてきて、「先生、オレ、すごかったすよね、今日」ととても得意気なのです。
生徒に何かを与えられたかな、と思いました。
それから、卒業生が学校に遊びにきてくれるときも、教員をしていることのやりがいを感じる時間です。
部活動は吹奏楽部を指導しているのですが、私自身も中学、高校と吹奏楽部に所属していました。
パートはクラリネットです。
そして、実は今も市の社会人の吹奏楽団に所属しています。
土曜日の部活の指導が終わったら、今度は自分の楽団での練習です。
数えたことはありませんが50名以上が参加している楽団で、定期演奏会もありますし、依頼されて演奏をすることもあります。
本当にめちゃくちゃ忙しくはありますが、辛くはなく、とても充実した毎日を過ごしています。
目標は、寄り添える先生になること
ーー来年度から正規教員としてのスタートとなりますが、初任に臨んでの抱負をお聞かせください
私は要領も悪いのですが、運も良くないみたいです。
大学生のときの教員採用試験は教育実習期間真っ最中で試験勉強が思うようにできませんでしたし、2回目も業務に追われているときでした。
合否発表では順位が発表されるのですが、それを見ると、不合格だったときもまったくダメだったわけではなく、あと一歩のところでの不合格でした。
今回は要領もつかみはじめ、学習できる環境も作ることができて、そして運も上向きになっての正規採用だと思っています。
とてもありがたいことだと思います。
心配しているのは初任者研修です。
今でもとても忙しいのに、業務を行いながら初任者研修が務まるかどうかが心配です。
それでも、教員は中学生からの夢ですから、やるしかないので頑張ります!
そして、長期的な私のビジョンは、中学時代に出会った先生のように、声をかけてもらいたい生徒、黙って見守ってほしい生徒、様々な生徒のタイプに合わせて、寄り添える教師になるということです。
頑張ります!!
(取材:2024年11月)
ーー 加藤先生、お忙しいところありがとうございました。忙しすぎて身体を壊さないように気をつけて、夢に向かって頑張ってください。聖学院大学の後輩の指導もよろしくお願いいたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
加藤さんの応援、どうぞよろしくお願いします。
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