いろいろな感情を音楽を通して共有できる人になりたい|#043 伊藤 万桜さん
聖学院みどり幼稚園 卒園 聖学院小学校 卒業
聖学院の広報誌『NEWS LETTER &Seig No.285』(2023年3月発行)の「歩む人たち」というコーナーでヴァイオリニストの伊藤万桜(いとうまお)さんの記事を掲載しました。
この『The story of Seigakuin』では伊藤さんの取材記事のロングバージョンをお届けします。
先日、ソプラノ歌手の金刺美穂(かねざしみほ)さんの記事を掲載しましたが、お二人ともピアニストの南雲彩さんと共演されているという共通点がありました。
卒業生の取材記事を通して、学校を超えた卒業生同士の新たなつながりが生まれたらと考えておりますが、その実現に近づいている実感を持ちました。
箸を持つよりも先にヴァイオリンの弓を持った幼少期
ーー 伊藤さんがヴァイオリンをはじめられたきっかけとヴァイオリンの魅力からおうかがいできますか?
私の両親が諏訪内晶子(すわないあきこ)さんのチャイコフスキーコンクールで優勝したときの凱旋コンサートを観て感動し、ヴァイオリンという楽器に魅入られ、自分たちに子どもが授かったなら、きっとヴァイオリンを習わせようと決めたのだそうです。
そして、両親が結婚して7年目に私は生まれました。
お箸を持つよりもヴァイオリンの弓を持つ方が先であったくらい、早くからヴァイオリンに触れる機会を与えていただきました。
それがヴァイオリンをはじめたきっかけです。
ヴァイオリンや音楽の魅力についてお話をすると、音楽は世界共通の言語であり、広い世界を体感してつながりを持てることは素晴らしいと思います。
様々な作曲家の作品を演奏することで、時空を越えて、自由にいろいろな世界を味わえます。
ヴァイオリンに関していえば、私は生涯の相棒だと思っています。
私の演奏によってお客様が感動して、涙を流されることさえあり、魔法にかかったような不思議な気持ちにさせてくれる楽器です。
なかなか出会うまでに時間はかかりましたが、1750年頃のイタリア製のこのヴァイオリンが私の相棒です。
真っ先に思い出すのは友だちや先生の笑顔
ーー 聖学院みどり幼稚園と聖学院小学校の思い出をお聞かせいただけますか?
私が生まれたとき、私たち家族は埼玉県の上尾市に住んでいました。
私が1歳のときに、同じ上尾市にある聖学院大学の公開講座を両親が受講しました。
当時は、聖学院大学の児童学科の学生が面倒を見てくれる託児サービスが大学内にあったので、私はそこにあずけられて、両親は大学の公開講座に参加しました。
その日、両親は、野原のように自然な園庭で、とても魅力的な幼稚園が隣接する敷地にあることに気がつきました。
それが聖学院みどり幼稚園でした。
興味を持ち、調べてみて、キリスト教の精神に基づいた児童教育の理念に感動したのだそうです。
そして私はみどり幼稚園に入園することになりました。
幼稚園や小学校の思い出は?と聞かれて真っ先に頭に思い描かれるのは友だちや先生の笑顔です。
今日の取材の前にも、聖学院小学校の同級生で現在は聖学院小学校で養護教諭を務める飯泉奈那さんと会ってきました。
みどり幼稚園では木登りをしたり、自転車を乗り回したり、プータロ小屋で遊んだことが印象に残っています。
小学校はセーラー服が可愛くて、今でもよかったなと思っています。
それからハンドベルの授業やクリスマスページェントで博士役をいただいたこと、パソコンルームが整っていたことなどが強く印象に残っています。
また、「自学ノート」というものがあるのですが、学習に取り組むことの基盤が自学ノートによって作られたと思っています。
園児たちには、ぜひ生の楽器の振動を体感してほしい
ーー プロのヴァイオリニストになろうという決意が固まったのはいつ頃でしょうか?
小学校の4、5年生くらいからコンクールに出場するようになって、聖学院が大好きなのに女子聖中高に進学しなかったのは、音楽科のある高校、音大への進路が両親の視野にあったのだと思います。
大学で師事した先生から、プロの音楽家としての心構えや、音楽家業界のお話をたくさんしていただいたことで、プロとしての自分をイメージできるようになりました。
また、在学中に海外のマスタークラスで学び、音楽祭に参加をすることでたくさんの刺激を受けて、音楽を届けることのよろこびを知り、ずっと音楽を届けられる人になりたいと思いました。
そして、文化庁主催のリサイタルができるオーディションを受けて合格したことが大きなステップとなりました。
ーー みどり幼稚園や聖学院幼稚園でも演奏会をされていますが、それはどんな経緯で実現されたのでしょうか?
私がみどり幼稚園の園児だったときに、女子聖学院中高の卒業生でギタリストの村治佳織さんの演奏会があり、「素敵な音だなあ」と印象に残っていました。
演奏会を行った際には、村治さんが演奏した会場と同じ場所で演奏できることをとても光栄に思いました。
演奏会が実現した経緯は、卒園してからも、一昨年にご退職された本田ゆかり先生と年賀状のやり取りをずっと続けていまして、先生は私の活動もずっと応援してくれていて、「今度、うちでも演奏会をしてよ」というお声かけをいただいたことがきっかけとなりました。
聖学院幼稚園でも演奏会を行ったことがあるんですよ。
フライパンを並べて木琴みたいに演奏する方や、人参などの野菜や様々なものを楽器にしてしまう方など5名くらいで演奏会をしました。
とても楽しかったです。
近年はコロナの影響で、生の演奏を届ける機会が失われていましたが、また演奏会ができるようになったら、園児たちには、ぜひ生の楽器の振動を体感してほしいと思っています。
いろいろな感情を音楽を通して共有できる人になりたい
ーー 伊藤さんのこれからの活動と、ビジョンをお聞かせいただけますでしょうか?
2021年から毎年2月に東京オペラシティリサイタルホールでヴァイオリン・リサイタルを開催しているのですが、今年も開催します。
そして8月に、サックスとピアノとヴァイオリンというちょっと珍しい取り合わせのトリオで、軽井沢大賀ホールで「SUMMER CONCERT IN KARUIZAWA vol.2 情熱の異色トリオ」を開催します。
サックスが入ると新しい響きになり、意外と合うんです。
日本では少ない編成ですので、私たちが広げていきたいと思っています。
このトリオでは昨年『夢の色彩』というデジタル限定のアルバムもリリースしました。
それから今年は7〜8月にドイツのキルヒベルク国際音楽祭に8年ぶりに参加させていただく予定で、とても楽しみにしています。
また、秋にはカナダのモントリオールで2ヶ月間ほど主にソナタについて学習するプランもあります。
今後のビジョンとしては、音楽家としていろいろな感情を音楽を通して共有できる人になりたいとずっと思っています。
私の演奏で少しでも気持ちが動いてくれる人がいたら良いなと思います。
(取材:2023年2月)
ーー 伊藤さんありがとうございました。
また、聖学院でも音楽会を開催させてくださいね。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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