生徒3年+教員43年、個性を伸ばす教育と野球部監督|#060 磯貝 創一さん
聖学院高等学校 卒業
聖学院創立120周年企画としてスタートしたnote卒業生紹介「The story of Seigakuin」。
120周年ということで、120記事掲載を目標にしていますが、なんとか目標の半分まで到達しました。
聖学院中高の卒業生を取材していると頻繁に名前が出てくる先生がいます。
特によく登場するのが、今回お話をうかがった磯貝創一先生です。
磯貝さんは一昨年に定年で聖学院中高を退職され、現在は世田谷区内の小学校で放課後の子どもたちの面倒を見る仕事をしていると聞き、さっそく取材してまいりました。
世田谷区の独自事業、新BOPの事務局長として勤務
ーー現在はどのようなお仕事をされていますか?現在のお仕事をするに至った経緯もお聞かせください。
現在は小学校で、放課後の子どもたちに健全な遊びや安全な生活の場を提供する仕事に関わっています。
ご両親ともお勤めの場合や、様々な理由から、放課後に子どもたちの世話をできない家庭が少なくありません。
世田谷区の小学校では、1〜3年生の低学年の小学生を対象とした学童クラブと4年生以上の小学生も対象とするBase Of Playing(以下BOP(ボップ))という事業があります。
学童クラブとBOPを統合する新BOPがスタートし、指導員を募集している公募の記事を世田谷区報で見つけて応募したところ、「磯貝さんのキャリアであれば事務局長を担当して欲しい」と言われました。
そのため現在は、新BOP事業を実施する小学校で、事務局長として指導員のマネジメント業務や、子どもたちと関わる仕事をしています。
もうすぐ4月ですが、実は4月からは別の小学校へ異動となります。
世田谷区の61の小学校で新BOP事業は行われていて、それぞれに事務局長が配置されているんです。
現在、私が勤務している小学校は児童数が多い小学校なので、学童クラブとしては230名を超える児童の登録があり、BOPには600名くらいの登録者があります。
とはいえ、実際に利用されているのは、一日に平均150名くらいの児童です。
指導員10名、プレイングパートナー7〜8名、児童指導職員3名と事務局長の私と、20数名で子どもたちをみています。
現在は春休み中なので、丸一日子どもたちに場所を提供しています。
午前中は勉強したり、読書をしたりして過ごして、お弁当を食べて、午後は今みたいに校庭で遊んだりしています。
けん玉やメンコ、コマまわしといった懐かしい遊びや、一輪車、フラフープなど身体を使う遊び、レゴやカプラなど手指と脳を使う遊びなど、様々な遊びで子どもたちは楽しんでいます。
子どもによってそれぞれ多様な才能があって、それを認め合うことも意味があります。
家にいてゲームばかりしているより、よほど健全な成長につながっているのではないかと思います。
聖学院を選んだ理由は、近くてキリスト教で野球ができるから
ーー聖学院在学中の思い出をお聞かせください。また、聖学院高校を進学先として選んだ理由も教えてください。
高校時代を振り返ると、とにかく野球三昧でした。
ポジションはショートで、3番、4番、5番あたりの打順が多かったです。
良くても4回戦進出止まりではありましたが、近年のようにメンバーが足りないということはありませんでした。
記念祭(文化祭)では実行委員長を務めました。
テレビ番組に出演したり、中継にきてもらったことはとても良い思い出です。
勉強は大嫌いでしたね。
大学はICU(国際基督教大学)に進学したので、「勉強を苦手なふりをしている」とか、「地頭が良かったんでしょ」とよく言われるのですが、本当に勉強は大嫌いで不得意だったんです。
私の妻は私と同級生で、小学校、中学校の私を良く知っているのですが、「なんであなたがICUに?」と私の勉強嫌いを保証してくれています(笑)。
決して優秀な生徒ではありませんでしたが、野球が大好きで、野球をしたかったので、嫌いな勉強との両立を心掛けて努力しました。
何か自分が得意なことを、一筋に頑張っていけば、そのために必要なことが何なのか自ら気づいて成長していくものなのだと思います。
なぜ、聖学院高校を選んだのかといえば、中学校当時、私の家族は目白にあるバプテストの教会に住んでいて、通学するのに近かったからということがあります。
母親は東洋英和で教員をしており、教会に住んでいるくらいですから、もちろんクリスチャンでした。
家から近く、キリスト教主義の学校で、野球部があるという条件が揃っていたので聖学院を選びました。
正直言えば、実はその当時、合格し易かったからという理由もありました。
入試は難しくなかったのですが、先生方は個性豊かで、授業はかなりレベルの高いものでした。
怖い先生もいましたが、自由な校風で、勉強面でも生活面でも何かを強いられることはなく、自分らしくいることができました。
初任から43年間、聖学院に勤務
教員時代も野球部監督として野球三昧
ーー聖学院中高の教員として思い出に残っていることはありますか? 教員になろうと思ったのはいつですか?
本当は私はコピーライターになりたいと思っていました。
私の祖母が女流コピーライターだったんです。
かっこよくて、憧れていました。
しかし、祖母は「映画を観ていても買い物をしていても、セリフや言葉が常に仕事と結びついてしまって、気持ちの休まる暇がないからおすすめできる仕事じゃないよ」と言っていました。
教員の母親の姿をずっと見ていたので、何となく私も教員を職業として考えるようになりました。
ICUでは専攻は「教育学」で英語が専門ではなかったのですが、ICUのキャンパスの中では様々なことが英語で、英語の教員や学生も多く、苦労はありましたがお陰で英語が身に付いていきました。
教育実習先も聖学院高校でしたし、運よく初任から43年間、聖学院中高の英語科教員として勤め上げることができました。
教員時代は、教育方針など大それたことは考えてはいませんでしたが、学校の主役は生徒であると常に思っていましたし、生徒それぞれの個性を受け容れて、得意なことを伸ばしてやりたいと思っていました。
また、自分が生徒だったときの聖学院の自由な雰囲気が大好きだったので、ずっとそうであればいいなと思っていました。
就任当初は軽音楽部の顧問でした。
ゴダイゴの浅野(2020年逝去)さんとか、小室等さんとか、聖学院出身のミュージシャンは案外に多く、軽音楽部も盛んでした。
私の就任後すぐは自分の野球部の先輩である非常勤教員と真田先生が野球部の面倒を見ていましたが、真田先生の引退のタイミングで、私が監督になりました。
「いつも喜び、すべてに感謝」が野球部のモットーです。
私もそうですが、それをずっと覚えていて実践している卒業生がいることは、とてもうれしい限りです。
働き方改革が主張される今どきではないかも知れませんが、年間に100試合くらい行っていた時期もあります。
楽しくて夢中でしたので、全然苦痛ではなかったですね。
私の一番下の息子が聖学院高校の野球部だったときもあります。
一緒に野球ができてうれしかったです。
昨年、惜しくもお亡くなりになられた稲永 修 先輩※にはとてもお世話になりました。
稲永先輩は私の20上の先輩となります。
聖学院が新校舎を建築するときにグランドが使えなくなって、毎日移動して練習をしていたのですが、荷物を運ぶために車が必要でした。
最初は中古のハイエースを購入して使っていましたが、調子も良くないので、稲永先輩に相談をしたところ、快く新しい車を提供していただきました。
本当に感謝しかありません。
個性を大切にして、他人を思いやれる人に
ーー磯貝先生のこれからのビジョンと、聖学院に期待することをお聞かせください。
もうこれから、大きなビジョンというものは描いていませんが、ここでこうして目の前にいる小学生たちが少しでも楽しい思い出を作ることに貢献できたらと思っています。
子どもたちには、自分の個性を大切にして、他人を思いやれる人になってもらいたいと願っています。
それは、聖学院の生徒にも同じ思いです。
何か1つしかできなかったとしても、その1つをどう伸ばしてあげられるのかが大事だと思っています。
次々にヒントを与えて急かすようなことをしなくても、必要なことはきっと自分から気づいて学んでいきます。
それから、「読み」「書き」「算数」はきっちりやるべきだと思います。
基本が身に付いていないところに、あれもこれもと飾り立てても、基本がしっかりしたものと比較して、深みがまるで違ってしまいます。
他の私立学校のどこでもがやっているようなことを真似して、トレンドに流されてしまい本来の個性を見失ってはいけません。
それが、私がこれからの聖学院に望んでいることです。
「人生はシャレ」 いつも笑顔で
ーー最後に、卒業生たちに向けてメッセージをいただけますか。
聖学院で学んだこと、知ったこと、出会いを人生に活かしてください。
「いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。どんなことにも感謝しなさい。」(テサロニケの信徒への手紙 5章16節)という聖句を忘れないでください。
人生はいろいろなことが起こります。
辛いこと、悲しいこともあるでしょうが、みなさんならきっと乗り越えることができます。
「人生はシャレ」いつも笑顔でいましょう。
聖学院のDNAを後輩たちに引き継いで、毎年、満開の桜の花を咲かす桜の木のように聖学院を育てていきましょう。
散った花も、咲いている花もみんな親子、兄弟姉妹です。
オール聖学院として次世代の子どもたち、青年たちの力となっていきましょう。(取材:2024年3月)
ーー 磯貝先生、ありがとうございました。これからも聖学院の応援をよろしくお願いいたします。卒業生もたくさん紹介してくださいね。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
磯貝先生の応援、どうぞよろしくお願いします。
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