「防災」と「文化創造」のプロジェクト運営|#017 菅野 雄大さん
聖学院大学 こども心理学科 卒業
聖学院大学の卒業生が出身地である宮城県で「防災」をテーマにした面白いプロジェクトに関わっているという情報を入手しました。
「防災」といえば、通常は食料の備蓄や避難訓練、ハザードマップづくりなどがイメージされると思います。
そうしたことも大切ではありますが、災害時に備えて日常から人々の関係性ができていることが重要と考え、それをコンセプトに町づくりをしているプロジェクトが『WATARI TRIPLE C PROJECT』です。
今回は、WATARI TRIPLE C PROJECTを企画、運営する株式会社ワンテーブルに昨年夏から勤務している聖学院大学の卒業生、菅野雄大さんを訪ねて、宮城県の亘理町にやってきました。
WATARI TRIPLE C PROJECT
ーー すごく気持ちの好い場所で働かれているんですね。
何か面白いプロジェクトに関わっているとお聞きしたのですが、菅野さんは現在はどのようなお仕事をされているのでしょう。
私の勤務する株式会社ワンテーブルは、食文化創造事業として、都市型農業の開発やコンサルティングなどを行なっています。
防災への意識も高く、5年半の保存ができるゼリータイプの非常食LIFE STOCKの開発、販売をしています。
亘理町で『WATARI TORIPLE C PROJECT』というプロジェクトが計画されていて、私はそのプロジェクトに関わる業務を行なっています。
ここは鳥の海パークサイドエリアと言いますが、設置されているコンテナにペイントが施されて、カフェや物販ショップ、ギャラリー、音楽スタジオなどになります。
その他にもバーベキューエリアやスケートボードパークの整備が予定されています。
このプロジェクトの特徴は、カフェやギャラリーなどができて商業・観光エリアとして整備されるというだけではありません。
サーファーやスケーターなどのアスリート、ミュージシャン、クリエイターなど8つの分野において世界をめざせる若い才能を発掘し、応援していきます。
オーディションによって選ばれた候補者30名は、地域おこし協力隊として有給で亘理町に居住し、高みをめざしてそれぞれの分野での活動を行います。
地域住民、地域企業、防災関連企業が連携しながらそうしたアスリートやアーティストの活動を町ぐるみで応援していきます。
そして、スポーツやアート、音楽などのクリエイティブな活動を通して、新たな文化を町に創出したいと考えています。
私は中学生の時に東日本大震災に被災して、家が流されてしまった経験をしています。
私の家に現在99歳になる曽祖父がいるのですが、震災当時から耳が遠かったんですね。
避難警告が出されても、曽祖父は耳が遠いため気が付きませんでした。
近所に住む私の同級生が周辺の家々を声掛けして回ってくれていて、そのおかげで無事避難することができました。
あらかじめ、この家には耳が遠い、年配の方がいるはずという情報があったからこそ救助できたのだと思うのです。
つまり、日常の中で、豊かな人間関係を築き上げておくことが有事の際に効果的に機能するということです。
その同級生は現在は警察官になって町を守っています。
ワンテーブルの島田昌幸社長は、実はそうしたコンセプトを持ってこのプロジェクトに取り組んでいます。
町の隣人に対して無関心でいるのではなくて、お互いに見守り合う町づくりです。
いろいろな防災があると思いますが、人と人とがつながるのが防災じゃないかということを島田社長に教えてもらいました。
私はその考え方に共感して、自分のビジョンが見えた気がしました。
ーー 現在のお仕事に就かれたのは社長のビジョンに共鳴したからでしょうか?
私は昨年の夏から現在の仕事をしておりますが、それまでは東京の企業に採用されて埼玉県で勤務していました。
その会社もビジョンの明確な素晴らしい会社だったのですが、そろそろ地元に戻りたいという気持ちがありました。
そんな時、高校時代からお世話になっている、尊敬する地元の先輩、柴田一生さんに声をかけていただきました。
最初は自分にできるだろうかという躊躇いもありましたが、防災に関われるということと、おっしゃる通り社長のビジョンに共鳴してお世話になることに決めました。
大学時代の活躍
ーー 大学在学中の活動で印象に残っていることを教えてください。
いろいろなことにチャレンジさせてもらいましたが、特にあげるとすれば、仙台での復興支援の活動と、個人的に行なっていた語り部の活動の2つです。
聖学院大学には震災直後から釜石市の支援を中心にして活動をしていたSAVEという復興支援のボランティア学生団体がありました。
しかし、私は仙台の支援にこだわっていました。
そこで仙台を拠点に活動をするボランティア団体を立ち上げたいと、大学のボランティア活動支援センターに相談しました。
「SAVEに入れば良いじゃない」と言われるかと思いきや、「やりなよ!」と団体立ち上げを後押ししてくれて、応援してもらえたんです。
私たちの団体はSTEPという団体名で、仙台を中心に、現場のニーズにあわせて農業支援をしたり、子どもたちの学習支援をしたり、地元のお祭りの運営サポートなどを他大学の人たちとも連携しながら行なってきました。
2016年2月に日本基督教団東北教区被災者支援センター・エマオでボランティア活動を実施して以来、その年の夏、翌年の2月、5月、7月、8月、9月、12月と頻繁に活動を行いました。
私の在学中にボランティア活動助成金の審査会がスタートして、その助成金を交通費に充てられるようになり、活動を増やすことができるようになりました。
語り部の活動は、私自身の震災の体験から防災の重要性を伝える活動です。
大学の授業で話をしたことがきっかけで講演の機会が増えました。
最初は大学のボランティア活動支援センターを通して、中学校や高校などから講演を依頼されていましたが、埼玉県内の高校からFacebookを通して私に直接依頼があったことがあり、それはたいへんうれしかったです。
聖学院大学こども心理学科の選択
ーー 仙台で育った菅野さんが埼玉県の聖学院大学を選んでくれたわけを教えてもらって良いですか?
中学生の時に私は被災しました。
高校時代に地元でボランティアをしていたのですが、震災にあった子どもたちはすごく怯えていました。
自分は子どもは大好きだったのですが、子どもとの関わり方についてすごく迷っていた時期であり、地元の人間として、一番近くにいる人間なのに何もできなかったという後悔があります。
そんな私の気持ちを理解していた恩師である当時の私の高校の先生に「埼玉県だけど子どもたちの心に寄り添うことをコンセプトに、震災を機にして学科を作る大学があるよ」と紹介されました。
調べてみてすぐに、「ここだな!」と思い、受験を決めました。
それが聖学院大学のこども心理学科でした。
学生を主人公にしてくれる聖学院大学
やりたいことが見つかったらきっと実現できる
ーー 菅野さんにとっての聖学院大学とは何でしょう?
聖学院大学は学生を主人公にしてくれるところだと思います。
先生や職員と学生との距離の近さは想像以上でしたし、自分がやりたいことを全力で応援していただいたと思っています。
そして、私にとっては、自分という人間が何者なのかを言葉で説明できるようにしてくれたところだと思っています。
ーー 今日はいろいろありがとうございました。
最後に菅野さんのこれからのビジョンと後輩たちへのメッセージをお話しいただけますか?
先日、私の地元でどんと祭があって火を囲んで地元の方々と話をする機会がありました。
どこからか情報は伝わるもので、私が戻ってきて亘理町で働いていることを地元のみんなが知っていました。
どんと祭のその場がすごく好くて、みんなが集まって、本当に楽しい時間でした。
自分はこういう場所が好きなんだなとつくづく思いました。
そして、そうした町づくりをできたら好いなと思っています。
今プロジェクトに関わっている亘理町にたくさん人が来てくれたら素晴らしいと思いますし、そうした町づくりに関わっていきたいと思っています。
それから、亘理町は防災の意識が高いので、全国的な防災のリーダー地域になって欲しいですね。
後輩たちへのメッセージとしては、プロジェクトやイベントなどいろいろなことに積極的に参加して欲しいと思っています。
そこからきっと何かが見つかると思います。
そして、何かやりたいことが見つかったならば、自分がSTEPを立ち上げて活動ができたように、「無理かな?」と思っても誰かに相談してみてください。
決してやらないで後悔しないように。
言葉にしてみたら簡単に実現することってあると思います。
ーー 菅野さん本当にありがとうございました。
今度は取材じゃなくてゆっくり遊びにきますね。
(取材:2022年6月)
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