結果よりも内容を重視する生き方を学びました|#066 中山 竜太さん
聖学院高等学校 卒業
聖学院広報センターは年に一回、6月末に、卒業生、在校生保護者、教職員らを読者とする『ASF NEWS』という広報誌を発行しています。
ASF NEWSの読者の皆さんにアンケートへご協力いただいているのですが、このたび、カンタス航空の日本・韓国支社長である中山 竜太(なかやま りゅうた)さんから、聖学院の後輩のために協力できることがあれば協力したいというメッセージをいただきました。
中山さんのプロフィールを記事として伝えることは、聖学院の後輩、卒業生をはじめ、関係者のみなさんに勇気と誇りを与えることになると考え、さっそくお話をうかがう機会をいただきました。
オーストラリアのフラッグキャリアの日本・韓国地区支社長
ーー中山さんが所属するカンタス航空の特色と、中山さんのお仕事内容、ポジションをうかがえますか?
カンタス航空はオーストラリアのナショナルフラッグキャリア(国際線を運行する、国を代表する航空会社)で、設立から100年以上の歴史を有する南半球最大の航空会社です。
JALやアメリカン航空など15の航空会社が加盟するone worldアライアンスに加盟しており、世界25ヵ国、98目的地に就航しています。
日本、オーストラリア間では、シドニー、ブリスベン、メルボルンに毎日4便運航しています。
カンタス航空の1番の強みは”安全”です。
100年以上の歴史の中で、たったの一度も死亡事故を起こしたことがありません。
私はこの、カンタス航空で日本・韓国地区の支社長をしております。
支社長としての主なミッションは日本と韓国地区の売上目標の達成です。
営業チーム、マーケティングチーム、ファイナンスチームを統率して目標達成をめざしています。
また羽田、成田のエアポートチームと連携してオペレーションのサポートもします。
前職はアマデウスという主に航空会社や旅行会社に様々なITプラットフォームを提供する外資系のグローバル企業で働いていたのですが、カンタス航空の日本・韓国支社長のポストの公募があり、それに応募して採用となり、現在に至っています。
カンタス航空の日本・韓国支社長に就任してから、実はまだ1年半しか経っていないのですが、「若い人たちに海外に目を向けさせたい」という夢が実現し、めざしていた仕事ができていることに幸せを感じています。
現在は、みなさんご存知のように景気や円安の影響があり、海外旅行離れの傾向があり、すべてが順調とは言えません。
しかし、オーストラリアは国が豊かで、食事も観光も充実していて、教育旅行でご利用いただいたお客様から、とても良いフィードバックをいただいています。
「海外をステージに」という明確なビジョンと、アジャイル型人生
ーー高校時代のビジョンから現在に至るまでの経緯を教えてください
思い起こせば、私は昔からずっと海外に興味があり、「海外へ留学したい」「海外で働きたい」と考えていました。
結果的に大学は経済系の学部へ進学しましたが、本当は国際関係や外国語の学部へ行きたいと思っていました。
もう1年浪人することを考えていて、担任の権頭 史 先生に相談をすると、
「浪人する選択肢もあるけれど、別の生き方もあるのでは? 英語を勉強したい、留学をしたいということならば、ひとまず大学へ入学して、その上で英語を学ぶ方法を考えるのはどうか」
とアドバイスされました。
それを聞いて、単に大学に入るためだけの勉強に、1年間を費やすことが果たして良いのかと私も思いました。
結局、合格していた大学に入学をして、大学で1年間休学をしてアメリカに留学したのですが、同じ1年を過ごすのに、受験勉強よりも留学で良かったと今は思っています。
大学に入ってからは頭を切り替えて、留学を叶えるために、昼間に大学で学び、夜には英会話学校で学びました。
しかし、大学で学んだ経済学なども決して無駄ではなく、大事な学びであるということに気がつきました。
聖学院で先生に教えられたことの意味を、大学に入ってからようやく理解したという感じです。
大学で学びながらアメリカ留学が実現できた経験は、後の私の人生に大きな影響を与えました。
就職活動では、旅行会社、航空会社、商社など、海外で活躍することを視野に入れて会社選びをしました。
そして、幸運にも近畿日本ツーリストに入社することができました。
入社してすぐに私は添乗の部署に配属され、3年間ほど海外で勤務をしました。
近畿日本ツーリストで13年ほど勤務して、ある程度、自分の仕事に納得ができるようになると、違う世界でチャレンジしてみたくなりました。
そしてアマデウスという、旅行会社、航空会社、空港、ホテルを顧客としてソリューションを提案、販売をする外資系グローバル企業に転職をしました。
アマデウスはフランス、イギリス、ドイツなどヨーロッパの航空会社が共同出資をして設立したスペインの会社で、さまざまな国籍の人たちと一緒に働ける環境にありました。
それはずっと私が望んできていた働き方だったので、とても幸せに感じていました。
会社に不満はなく、感謝しておりましたし、私も50代半ばを過ぎ、このままアマデウスで仕事人生を終えるのだろうと漠然と思っていました。
しかし、カンタス航空の公募を知ったときに、航空会社とホテルの仕事をやり残していたこと、そして、やはり経営トップの立場で仕事をしてみたいという夢を思い出してしまいました。
そして、考えて行動しないのではなく、行動してから考えようと思いチャレンジすることにしました。
「海外をステージに」ということは少年時代から描いていたビジョンですが、しかし1つの目標に執着するのではなく、人や仕事との出会いの中で、少しずつ目標の形を変えながら前に進んできました。
そうした方がチャンスも可能性も広がると感じていたからです。
そして、おそらくその根底には、聖学院の自由な校風の教育スタイルのもとで学んだことが強く影響しています。
聖学院と聖学院の先生たちに、結果よりも内容を重視する生き方を教えてもらったのだと思います。
聖学院の卒業生が社会で大活躍できる理由
ーー進学先として聖学院高校を選んだ理由と、高校時代の思い出を教えてください
私が中学生の頃は、今のようにコンプライアンスが重視されていなくて、生徒の校内暴力が問題になった時代であり、生徒の反発の原因には反発に値する威圧的な教員の存在があったりしました。
そのため私は、公立の高等学校に良いイメージを持つことができず、私立学校のリベラルなイメージに憧れていたということが一つあります。
私は中学時代にテニス部に所属してました。
すごくうまかった、強かったというわけではないのですが、高校で硬式テニスをやりたくて、硬式テニスができる高校を探しました。
そして決め手は、初めて聖学院に学校見学に来た体験です。
聖学院の雰囲気を体感して、「自分の行くべきところはここだ!」と強く思ったのです。
硬式テニスが高校を選んだ理由の1つですが、その目的通り高校では3年間テニス部に所属しました。
そのため、高校の思い出と聞かれれば、まずテニス部を思い出します。
テニス部の顧問の先生は山崎 一秋 先生という社会科の先生でした。
部活動といえば、一般的には先輩後輩の上下関係があるものですが、山崎先生の指導のもとでは、先輩は後輩に対して威張ったり、理不尽なことを要求したりすることなく、自由な風土の中で伸び伸びと純粋にスポーツを楽しむことができました。
部活の話ではありませんが、現役の受験のとき、私は推薦入試での受験をめざしていたので、顧問の山崎先生と担任の権頭先生に、毎日のように小論文の指導をしてもらったという思い出があります。
今思うと、「自分が先生だから」「指導をするのが仕事だから」という業務分掌や義務の範囲を超えたところで、先生たちが純粋に応援する気持ちで私たち生徒に関わってくれたことは、生徒たちの人格形成に間違いなく好い影響を与えていると思っています。
偏差値や進学実績を評価基軸とした当時の学歴社会の中で、あまり認められたものではなかったにも関わらず、個人を尊重し、自由にさせて、進学実績ではなく人を育てることを重視した校風であったことが、現在、さまざまな場所で、キーマンとして活躍する多くの卒業生を社会に送り出すことができた理由なのではないでしょうか。
思いやりとインクルーシブ・リーダーシップ
ーー経営の立場から見て、会社に欲しい人材とはどのような人材でしょう?
外資系の会社として英語力や異文化コミュニケーションの能力を備えていることは必須として、それ以上に大切なのは、”思いやり” であると私は思っています。
外資では組織がタテ割りなので、スキマの業務が発生しやすいです。
例えば言語の問題があります。
日常業務の中での翻訳は、業務として割り振られてはいませんが実際には必要な業務です。
仕事を押し付けあってばかりいてはチームワークは育まれず、パフォーマンスが低下するばかりだと思います。
そこで必要なのは "尊重" し合うこと、そして"思いやり"です。
カンタス航空のスタッフメンバーには、多様な個々の強みを活かして、チームの力を高めるための働きかけができる "インクルーシブ・リーダーシップ” を持つことが求められています。
ーー中山さんのこれからのビジョンをお聞かせください
航空会社は運輸業であり、人やモノを運ぶ仕事です。
そして人と人とをつなぐ仕事でもあります。
私も人と人とをつなぐことに貢献できたらと思っています。
カンタス航空はオーストラリアと日本や韓国を結びます。
90年代にオーストラリア旅行のブームがありましたが、その頃から比べて様々なことがグレードアップしています。
食事はさらに美味しくなり、人は優しく、素晴らしい自然もあります。
街並みはどんどん新しくなっています。
パリ、ロサンゼルスの次にはブリスベンオリンピックが2032年に予定されています。
オーストラリアは、これからますます脚光を浴びていくと思います。
オーストラリアに一人でも多く旅行してもらえるように、オーストラリアの良さをアピールし、アウェアネス(意識)を高めたいと思っています。
そして、本当に素晴らしいオーストラリアを多くの人に体験してもらいたいということが私の願いです。
長期的には、具体的なビジョンではありませんが、「人の間に立ち、人の役に立ちたい」「若い人たちの助けになることを生涯を通じてめざしていきたい」ということが私のミッションだと思っています。
時間を無駄にしない、夢中になってほしい
ーー最後に、聖学院中高の後輩たちへ、メッセージをお願いします
私自身、目標に固執しないで柔軟に生きてきました。
ですから、こうあるべきというアドバイスはあまり好きではありません。
いろいろな目標、いろいろな思い、いろいろな考え方があると思います。
どんなことをするのも自由だと思いますが、何をするにしても時間を無駄にしてほしくないと思っています。
そして、何かに夢中になってほしいと思います。
昔と比べると情報やツールといったものは身近に豊富に存在します。
プレゼンテーション能力やスキルは一人でも磨くことができます。
しかし、もっと大切な人間性や人間力といったものは、人との関わりや、教育の中でしか培うことができないものです。
今のみなさんの環境を大事にして、そこで学べることをしっかり学んでほしいと思っています。
(取材:2024年9月)
ーー中山さん、ありがとうございました。これからも聖学院の応援をどうぞよろしくお願いします。
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