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「循環型社会を想像する」SFプロトタイピングワークショップ (2024/8/8開催)

聖学院教育デザイン開発センター DX教育ユニット 
日立−産総研CEラボ×UoC

2024年8月8日(木)、聖学院教育デザイン開発センター DX教育ユニットの活動の一つとして、聖学院中高、女子聖学院中高の生徒の希望者を対象に、UoC(UNIVERSITY of CREATIVITY)TOKYO CAMPUSにてUoCと日立−産総研CEラボが共催し、アミタ株式会社が協力する「SFプロトタイピングWS」が開催されました。


SFプロトタイピングとは
SFとは言うまでもなくScience Fictionの略。
SF小説を作るようなやり方で、未来を想像・妄想してみる手法がSFプロトタイピングです。
SFプロトタイピングの3つの特徴
①未来社会を象徴するガジェット
②動きのあるシナリオを想像する
③社会を生きる登場人物の視点

参考書籍:宮本 道人,難波 優輝,大澤 博隆(2021)『SFプロトタイピング』 早川書房
宮本 道人(2023)『古びた未来をどう壊す?』光文社




ワークショップの概要

ワークショップは11時30分から16時までの半日をかけて実施。
お昼休憩なしでの開催のため、サンドイッチやお菓子をたくさんご用意していただきました。

参加した生徒は全員で18名。
聖学院中高から16名、女子聖学院中高からは2名の生徒が参加しました。

18名の生徒は4つのチームに分かれ、1チームに1名、日立−産総研CEラボのアドバイザーが加わりました。

赤坂の都心にある、見晴らしの良いクリエイティブな空間には、ワークショップ参加者の他、聖学院の教職員、日立−産総研CEラボやアミタ株式会社の関係者など、取材、見学者がたくさん集まっていました。

ワークショップの流れ
1. アイスブレイク(マンダラート自己紹介)
2. SFプロトタイピングの概要とワークショップの流れ
3. インプット:サーキュラーエコノミーとは
4. インプット:サーキュラーエコノミー推進の具体的な実践事例
5. 未来ガジェットを生み出そう!
6. 未来ストーリーを考えよう!
7. 未来ストーリーを寸劇にしよう!
8. 講評と振り返り
9. 記念撮影

自己紹介のアイスブレイクからプログラムがスタートし、場が温まると、UoCのファシリテーター世羅 孝祐さん、須田 和博さんからSFプロトタイピングの概要とワークショップの流れが説明されました。


サーキュラーエコノミーについてインプット

情報・知識のインプットとして、日立−産総研CEラボの伴 真秀 講師によるサーキュラーエコノミーの講義が行われました。

従来のリニアエコノミー(線形経済)と、これからの社会に求められているサーキュラーエコノミー(循環経済)との違いや、環境性を重視する人々がいる一方で環境性よりも経済性・利便性を重視する人々がいることを学び、そうした人たちの意識や行動をどう変えていくべきかを考えていきました。

日立−産総研CEラボ 伴 講師


続いて、アミタ株式会社 武津 雄太(ふかつ ゆうた) 講師からは、アミタが運用するMEGURU STATION®など、サーキュラーエコノミー推進の具体的な実践事例が紹介されました。

MEGURU STATION®は地域課題の統合的な解決を目指し「互助共助を生むコミュニティ拠点」と「資源回収ステーション」の2つの機能が融合した新しい仕組み。MEGURU STATION®を基盤として、そこに生ごみを再資源化する小型バイオ装置やプラスチックボトルの詰め替え利用、ゼロ円ショップ、住民同士の交流スペースなどを重ね合わせて、人と人のつながりの増幅と資源の循環が促進される地域づくりを推進しています。

アミタ株式会社 武津 講師


未来ガジェットを生み出そう!

”ガジェット” とはツールやアイテム、仕組みなどを示す言葉です。

"未来ガジェット" とは、現在の課題を解決するために、未来に開発されるであろうガジェットのことを言います。

このワークでは、身近に発生している無駄にはどのようなものがあるのか。
そして、その無駄をなくすためにどんなツールや仕組みがあれば良いのかを考えていきました。

未来ガジェットを考えることは、ドラえもんのひみつ道具を考えることに、とても似ていますね。

個人で考えたアイデアをチームでシェア


未来ストーリーを考えよう!

未来の循環型社会では人々はどのような生活をしているでしょうか?
どのような課題が生じていて、私たちはどのように解決しているのでしょうか?

前のワークで考えた未来ガジェットを3つ使って、未来にある課題とその解決のSFストーリーを考えるワークを行いました。

実は、4チームに課された題目は共通ではなく、それぞれ異なります。
課題の詳細については記事後半をご覧ください。

SFストーリー作成には、物語のシナリオでよく使われる「三幕構成」の手法が使われました。

序盤となる「第一幕」は状況設定です。
まずは主人公らの登場人物と、その背景にある世界観を説明します。

中盤にあたる「第二幕」では対立と葛藤が描かれます。
何か事件が起こり、主人公は何らかの対応を求められます。

そして結末となる「第三幕」では解決が示されます。
事態が収束し、平和が戻り、あるいは次のステージが現れます。


未来ストーリーを寸劇にしよう!

チームで考えた未来ストーリーの発表方法は寸劇です。
未来の生活者を自ら演じてみることによって、登場人物の視点になって未来の課題を感じることができます。

未来ストーリーの寸劇の演出として、その背景を描くため、著作権フリーの画像生成AIサービス「Adobe Firefly」が使用されました。

Adobe Fireflyで作成された画像


さて、いよいよ寸劇の発表です。
発表順はジャンケンで決めました。
トップバッターはDチームです。

Dチーム「月曜日に電気の供給が止まるという島」

【課題】海中送電線の緊急メンテナンスで、しばらく月曜日は電力供給がストップ。島内のインフラ(電気自動車/水道管/電線)に電気が使えなくなってしまう… どうやって乗り切ろう?

自家発電を行なっている、ホテルと大型客船、そしてソーラーパネルを搭載した電気自動車で月曜日だけ生活するというアイデアで島民全員の月曜日の暮らしを成り立たせるという寸劇が演じられました。
島の面積や人口など、題目にない詳細な設定がされていると言う意味が理解できたという講評が講師からありました。
さらにコミュニケーションの進化した未来に、あえて電話を使って連絡をするという演出も面白かったです。

Dチームの電気がストップする島、その名も「サーキュランド」


Cチーム「布の供給が減ってしまった衣装制作会社」

【課題】海外情勢が変わってしまい、布の供給が減ってしまった。衣装制作の会社は大打撃。今度予定しているショーの衣装、どうしよう…

未来ガジェットのワークで出されたアイデアの中から、食べ物による課題解決のガジェットをヒントに、食料から服を作るという物語が考えられました。
現実にキノコの菌で服を作る技術がすでに考案されているので、十分に実現可能な話ですねという講評がありました。

Cチームは、食料から服を作る物語


Bチーム「ハンバーガーショップのゴミを減らす」

【課題】あなたが経営するハンバーガーショップ。ゴミの量に税金がかかることが突然決まり、経営が苦しくなってしまいそう。ゴミの量をもっと抑えられないか…

食べ残しをしたお客さんはその食べ残しをお店の裏庭にある畑のコンポストに入れて、さらに畑を耕さなくてはならないというお店ルールを設定し、また、食べられる素材の包装紙を開発しました。
そして、農作業の体験がお客さんに好評を得て、経営が上向きになるという物語が展開されました。

Bチームはハンバーガーショップ、
ハタケドナルド 青坂店のサクセスストーリー


Aチーム「銭湯の経営問題」

【課題】実家の銭湯の経営が苦しい…! 最近流行りのサーキュラーエコノミーを活用して、何かもっと売上をあげたり、あるいはコストを下げることはできないか…。

銭湯のお客さんに自転車をこいでもらい、その力を使って発電、電力供給。
お風呂に入ってさっぱりするだけではなく、運動ができて、健康にも配慮できる銭湯という経営戦略が描かれました。
さらに、銭湯の水の再利用で、果物を栽培するという案も加えられました。
これは、銭湯の大浴場に富士山の絵が描かれていることが多いことから、実家の銭湯の立地を果物の栽培が多い山梨県に設定したことで、アイデアが連想されたようです。

Aチームは山梨にある銭湯の経営立て直しの物語


寸劇発表を終えて

未来ガジェット作成のワークを見学した限りでは、現実に近い、実現できそうなアイデアが多く出されていて、果たしてこれで魅力的なSFストーリーになるだろうか?
もっとはじけたアイデアでも良いのでは?
と、実は思っていました。

しかし、演じられた寸劇を見ると、そんな心配ご無用の、魅力あふれるSFストーリーに仕上がっていたことに驚きました。

その豊かな発想力はもとより、生徒たちの演技力の素晴らしさも特筆すべきものでした。

4チームすべての寸劇の発表が終了すると、UoCのファシリテーターの世羅さん、須田さん、そして日立−産総研CEラボの伴さんから、各チームへのフィードバックコメントをいただきました。

コメントの発表の後、生徒たちは、寸劇で演じた登場人物の気持ちになって出来事を日記に書く「未来日記」と「今日のワークショップの感想」という2つの事後課題に取り組むことで1日を振り返り、本日のすべてのプログラムが終了しました。


最後はみんなで記念写真を撮影しました


聖学院の生徒へのメッセージ

UoC フィールドディレクター 須田 和博さん
4チームそれぞれに視点の独自性があって、面白かったです。 Dチームは、島の世帯数に占めるケア数の推移でストーリーの骨格を作っていったところ。 Cチームは、衣類資材がないなら食料資材(蕎麦)で服を作ればいい、という発想。 Bチームは、「食べられる紙」を包装材にすることで、食品ゴミと紙ゴミを一緒にコンポストにしちゃえ!というところ。 Aチームは、人力発電を観光客の「お楽しみ」にすればいい、という発想。 それぞれに、未来の循環社会への次世代なりの元気なアプローチが発揮されていたと思います。午後半日の集中ワーク、おつかれさまでした!

日立−産総研CEラボ(株式会社日立製作所) 伴 真秀さん
今回想定した2040年の循環社会は、皆さんがちょうど社会を動かす中心となっている時代の社会です。皆さんが発想したユニークかつ大胆なアイデア、真剣に演じてくれた未来のワンシーンは、その社会をかたちづくるための貴重な種であると思っています。私たちは皆さんからもらった、未来の社会をつくるたくさんの種から新しい技術や仕組みの研究やデザイン、ビジネスという観点で少しずつ次の社会を育てていきたいと思います。
さんもぜひ、15年後の未来に想いをはせながら「もしこうだったら・・?」と考えることを続けてくれたら嬉しいです。今回描いた未来に少し近づいた将来の循環社会で、再び皆さんと対話ができる日を楽しみにしています。ありがとうございました!

アミタ株式会社 武津 雄太さん
サーキュラーエコノミー型の生活という大人でも難しいテーマに対して、学生のみなさまがわくわくしながら課題解決をする姿勢に感銘を受けました。
どのようなことができそうか?、と未来視点で考える大切さを改めて学生のみなさまから学びました。これからも、サーキュラーエコノミーという挑戦に一緒に立ち向かっていってもらいたいです。

聖学院 DX教育ユニット長 聖学院中高  山本 周 教員
聖学院中高参加者全員が、未来の循環型社会を創るという共通の目標に向かって、熱心にアイデアを出し合い、議論を深めていました。 今後は様々な最新技術の視点も増やしつつ、GX・SX教育ユニットとも連携をし、テクノロジーも活用した生徒たちのソーシャルアクションをサポートしていきます。

聖学院 DX教育ユニット 女子聖学院中高  大津 佑万 教員
今回のワークショップでは、サーキュラーエコノミーをテーマにした未来ガジェットやストーリーの創造を通じて、持続可能な社会について深く考えることができました。寸劇を通じて、未来の循環型社会を考えるプロセスをリアルに体験できたのではないでしょうか。これからもチーム聖学院として、男女合同でウェルビーイングの探究を続けていきましょう!


UoC(UNIVERSITY of CREATIVITY)
UoCは、創造力で世界の可能性を刷新すべく2020年9月に開校された「創造性の大学」です。Akasaka BizTowerの23Fに東京キャンパスがあり、さまざまな研究・教育・プロジェクトが行われてます。UoCは、10の研究領域、29名の運営クルー、100人超のクリエイティブリーダー、1700人の参加メンバーからなるクリエイティブコミュニティです。


日立-産総研CEラボ(日立-産総研サーキュラーエコノミー連携研究ラボ)
日立-産総研CEラボは、株式会社日立製作所と産総研(国立研究開発法人産業技術総合研究所)が、資源利用の高効率化を追求した「サーキュラーエコノミー(循環経済)」の実現に向けて、2022年10月に産総研内に設立されました。「循環経済社会のグランドデザインの策定」、「循環経済向けデジタルソリューションの開発」、「標準化戦略の立案・施策の提言」の3つの研究テーマを掲げ、あるべき循環経済社会像、必要とされるルールやソリューション等についての検討が進められています。


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