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礎になったのが、聖学院で学んだ精神だと思っています|#046 山本 朝妃さん

女子聖学院短期大学 英文科 卒業

広報センターでは広報誌のアンケートを毎号実施しています。
ご回答者にはメールにて、質問への返答やお礼を申し上げています。

そんなご回答者のお一人である山本 朝妃(やまもと ともい)さんからメールにご返信いただき、下記のように伺いました。

「女子聖学院短期大学で学んだことが、末娘をここまで育ててこられた原動力になっている気がいたします。」

とのこと。

気になって仕方がないので、早速取材させていただくことに。
ご指定の、福祉施設運営のカフェ「喫茶 ふれんど」へ向かいました。

取材場所へ向かう途中、新宿駅で聖学院大学のポスターをパシャリ。
女子聖学院短期大学の伝統は、今も聖学院大学に受け継がれています。

思い起こされる聖書の言葉


ーー本日は取材をお受けいただきありがとうございます。
早速ですが、こちらのカフェは末のお嬢さんと関係があるとか。

そうなんです。
ダウン症の娘が通所している福祉施設がやっている喫茶店で、いつも沢山の人が訪れています。

末の娘がダウン症で、今年23歳になります。
紆余曲折ありましたが、女子聖学院短期大学で学んだことが、末娘をここまで育ててこられた原動力になっている気がしています。

起こったことは変えられないけれど、その全てを受け入れて、これから自分がどうやって生きていくか、どうやって育てていくか。
その礎になったのが、聖学院で学んだ精神だと思っています。


ーーなるほど。
「女子聖学院短期大学で学んだこと」「聖学院で学んだ精神」について、もう少しお伺いできますか?

私には子どもが3人いるのですが、障がいを持って生まれたのは末娘が初めてでした。
障がいがあると分かった当初はどう育てていけば良いか分からず、実際の子育てでも上の2人とは異なる点が多く、模索する毎日でした。

そんな日々を送っていく中で、ある時ふと女子聖短期大学の授業『キリスト教概論』で教わった言葉を思い起こしました。

汝の隣人を愛せよ

マタイによる福音書22:37-39

私はクリスチャンではないので、当時はこの言葉について、理解はしても納得するところまでは落とし込めていなかったと思います。

けれども、末娘を見ているうちに「人間は一人ひとりが違うんだ」「たとえどんな風に生まれたとしても、一人ひとりの個性を大切にしなければ」と考えるようになりました。

末娘が生まれた時、看護師さんから「この子はきっと、あなたに"何か"を教えてくれるはず」と言われていたのですが、その"何か"とは、「きちんと『その人』を見ることの大切さ」だったのではないでしょうか。

みんなそれぞれの良さがあることを知り、愛するということ。
この時になってスッと実感できるようになりました。


ーー聖書の言葉が山本さんの中で生かされたのですね。
そして、”『その人』を見ること”、というのは当たり前のように感じますが、同時に少し難しくも感じてしまいます……。

人間のままならない所ですよね。

私も、末娘の出産当初「自分は周りからどう見られているのだろう?」「末娘をどう育てていったらよいのだろう?」そんなことばかりを考え、よく涙を流していました。

そんな時、長男が私に
『ママ、どうしていつも泣いているの? ○○ちゃん(末のお嬢さんのお名前)は大きくなったらどんな女の子になるんだろう? きっと可愛い女の子になるよね。』
と言ってくれました。


妹に障がいがあることを、長男には伝えていませんでした。

しかし、長男は目に見えない"何か"を察知したのでしょうか?
色眼鏡で見ることなく、末娘のことを自分の可愛い妹として、素直に見てくれているのだと気がつきました。

この長男の言葉を聞いて、一人でくよくよと悩んでいた自分が恥ずかしくなりました。
泣いてなんていられない。
上の子たちと同じように、この子を世界一幸せな子に育てていかなくては!!
そう思ったら、自然と前を向いて歩いていく勇気が湧いてきました。


『障がい』という言葉は一言では上手く言い表わせず、難しいものです。
私の中では、周りの目を意識したり、されたりする、目に見えない壁のことを指すのではないのかな? と思っています。

世界中の皆さんが、ちょっとだけ周りのお力を必要としている方々のことを理解してもらえたのなら。人にはそれぞれの良さがあることを意識し、一人ひとりに向き合い助け合い、愛することができたならば。
障がいという言葉は、この世に要らなくなるのではないでしょうか。


セミナーハウス、ゼミ旅行、ブレスレット~思い出の数々~ 


ーーご子息も素晴らしい方ですね! 山本さんしかり、ご子息しかり、見習いたいものです。
さて、話は変わりますが、在学時の思い出などはいかがでしょうか?

そうですね。
まず、在学時はテニス部と授業に2年間、精一杯打ち込みました。
テニス部は就職活動時期ギリギリまで参加し、面接時にも日焼けしていたほどでした。

授業では、ゼミは忘れられません。
園部治夫先生のゼミに在籍し、小泉八雲の研究をしました。
小泉八雲が愛した松江にゼミ旅行に行ったりもしました。

それから、クレーラ学長自らPCの授業をしてくださったことも印象深かったですね。

聖学院大学チャペル内に設置されている女子聖学院短期大学記念室には
今でもクレーラ先生ご愛用のMacなどが大切に保管されています。


他にも、軽井沢のセミナーハウスは記憶に残っています。
まだ入学したばかりで友人もできていない中、大部屋に7~8人で泊り、みんなで親交を深めました。

聖学院軽井沢セミナーハウスは、1941年平井庸吉女子聖学院院長(当時)が教職員、保護者、卒業生から贈られた藍綬褒賞・古希のお祝い金を全額寄付されたものを基とし、それに学校の備蓄を加えて夏期寮(軽井沢寮)として購入されました。2017年の閉館にいたるまで、多くの子どもたちが学び舎として利用してきました。


そして、外せないのが卒業式です。
卒業式はみんな袴を着るのですが、先輩たちの袴姿を参考に選ぶところから楽しかったです。
また、私たちの学年は卒業時、校章の入ったブレスレットを貰ったことも忘れられない思い出です。

卒業記念品のブレスレット。
女子聖学院短期大学の校章が輝いています。

女子聖学院短期大学の校章
(女子聖学院短期大学記念室の入口より)

『Love God and Serve His People』は、今でも学校法人聖学院のスクール・モットーとして掲げられています。

建学の精神・理念 | ”教育におけるSDGsとは”を考える学校法人 聖学院 (seig.ac.jp)


今度は自分が、受け入れる側として手伝いたい


ーー女子聖学院短期大学があり、その後の子育て経験があり、今の山本さんがあるのですね。
他にも何か、影響を受けたことや変化したことなどはありますか?

そうですね、転職も当てはまるでしょうか。
元は介護施設で働いていたのですが、末娘の関係でお声がけいただき、少し前から福祉施設に転職しました。

自分の中では転職することに迷いもあったのですが、周囲から「福祉施設は合っていると思うよ」などと言われ、決断しました。
そして、実際に行ってみたら楽しく、そして気づきも得ました。


ーー転職先は山本さんにピッタリだったのですね。
ちなみに、気づいたことの詳細や、これからのビジョンがあればお聞かせいただけますか?

自分が親として、末の娘を福祉施設に送り出していた時は、率直に言ってしまうと「ご迷惑をおかけし申し訳ない」という心境で送り出していました。
それが、福祉施設の一員として受け入れる側に立ち、通所している子どもたちの成長を見守ることの充実感を知ったのです。

福祉施設はアットホームな雰囲気で、みんな明るく声をかけてくれます。
そんな子どもたちが何かできるように一生懸命に何かをしている姿を見ると、応援したいという意欲が沸きます。

末娘を育てていく中でも思ったことですが、「たとえ何かの1番ではなくても、それぞれに素晴らしい点があること」「世界には様々な人がいる分、色々な世界があり、『その子らしさ』も人それぞれであること」を転職して改めて実感しました。

自分にできることは微々たるものだとは思いますが、これからも福祉施設で子どもたちの手伝いをしていきたいと思います。

加えて、自分は親・家族の立場や気持ちについても分かるので、将来的には子どもの支援にもさらに取り組んでいけたらと考えています。


ーー最後に、女子聖学院短期大学の関係者に向けて、メッセージなどがあればお教えください。

感謝の言葉しかありません。

女子聖学院短期大学自体は閉校してしまいましたが、またどこかで卒業生の記事や、先生のお写真などが見られたらと思います。

2年間、本当に楽しかったです。ありがとうございました。


ーー 山本さん、この度は本当にありがとうございました。
福祉施設でのご活躍を祈念いたします。

また、女子聖学院短期大学について、今後も折を見て情報を発信していけたらと考えております。
今後の広報活動もご期待ください!

●山本 朝妃(やまもと ともい)さん プロフィール
女子聖学院短期大学 英文科卒業(女子聖学院短期大学は現在は学生募集を終了しております)
結婚後3人の子どもに恵まれ、末娘にダウン症の子を授かった。
色々な悩みや苦労を経験するも、無事成人する姿を見届け、一社会人として働くまで育て上げる。
現在はダウン症の娘を育てた経験を活かし、福祉施設で多くの子どもと触れ合いながら、充実した日々を送っている。

(取材:2023年9月)
(筆者:職員 N.K)


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