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【Z世代の活躍!Vol.3】デザインの価値が認められる社会をめざして|#064 田村 義希さん

聖学院中学校・高等学校 卒業

大学在学中にコンテストで受賞! 大学案内に掲載!などなど、若くから活躍している聖学院の卒業生がたくさんいます。

「The story of Seigakuin」では、そうした若き卒業生たちにフォーカスした『Z世代の活躍!』の連載をお届けしています。

シリーズ3回目となる今回は、今春大学を卒業し、銀行でUXデザインを担当している田村 義希(たむら よしき)さんをご紹介いたします。





ネット銀行でUXデザイナーとして勤務

ーー田村さんの現況を教えてください

現在、私はネット銀行のUXデザイン部に所属していて、ユーザーの使い易い仕組み作りなどのデザインをする仕事をしています。

私の部署には20名ほどのデザイナーがおり、いわゆる見た目だけをデザインする仕事だけではなくて、UX(ユーザーエクスペリエンス)すなわちユーザー体験に関わることをデザイン・設計しています。

入社してまだ3ヶ月も経っていないのですが、実は学生時代からインターンシップや内定者アルバイトでお世話になっていました。

バイト時代に、会社で “STUDIO”というツールを導入して「つかいかたガイド」という新しいWEBサイトを作ったのですが、つい先日、その導入についてもう一人のメンバーと取材を受けて、記事(↓)が公開されています。

私はもともと学生時代にもWeb制作などの仕事をしていたのですが、社内での更新コストを抑えるために、外注することなく社内のデザイナーによって更新が完結したら良いということで、専門的なコーディング知識が必要ないノーコードで扱えるSTUDIOを選んだという経緯がありました。


会話から下心を特定し可視化する作品

ーー優秀賞を受賞された卒業制作の作品についてお聞かせください

〈会話から下心をリアルタイムに特定するAI〉という卒業制作の作品が優秀賞を受賞し、「2023年度 武蔵野美術大学 卒業・修了制作 優秀作品展」で展示されました。

この作品の発想のヒントは日本人がコミュニケーションの手段としてよく使う「飲みに行こう」という言葉への違和感でした。
本当に飲みに行きたくてそう誘っているのか、あるいは社交辞令なのか、その言葉の裏側にどのような本音が隠されているのか、「本心で思っていること」と、「実際に発信されている言葉」とのギャップを可視化できたら面白いのではないかと思い、300人のインタビューによって開発した” 下心特定専用のAI "と、音声認識による発言や画像認識による性別、年齢の情報を組み合わせた作品を制作しました。

優秀賞受賞の報告を田村さんからいただき、聖学院高校の情報の特別授業として卒業制作の紹介をしていただきました。
そのレポートは聖学院中高のホームページに掲載されています。


ーー大学時代で印象に残っていることを教えてください

授業で出された課題の、教授の意図を推測

小中高などの答えの決まった課題では、宿題であれば ”やること自体" が正解であり、試験であれば一般的な模範回答に近い答えを出すことが正解です。
私は全然できない生徒でしたが…(笑)

しかし、大学や、実社会に出て与えられる課題の正解は「課題を与えた人の求めているモノ」です。
会社においては上司、大学においては教授、の求めているモノです。

もちろん、幼少期も無意識に親の求めている自分であろうとしましたし、聖学院でも「自由研究」や「クエストカップ」など、答えのない課題は増えてきていると思います。

美術大学という少し変わった環境を想像したならば、
「自分が表現したいことが正解では?」
「教授の想像を超えたモノが評価されるのでは?」
と思いがちではないでしょうか。
それは間違ってはいませんが、しかし、実はそれも教授の求めているモノに過ぎないのです。

例えば、大学に入学してすぐの頃ですが「岩を表現する」という課題がありました。
絵が得意ではない僕が普通に岩の絵を描いても、絵の上手い同級生にはとても太刀打ちできません。
しかし、教授がその課題に求められていることは、時間をかけ深く向き合い、特異な表現に落とし込むことのように感じました。

そこでキャンバスをダンボールの箱に入れて、拾ってきた石ころに1色ずつ絵の具を垂らして箱に入れて、蓋をして箱を振ります。
その作業を授業のたびに12日間繰り返し、真っ黒なキャンバスを作りました。
しかし、よく目を凝らして見ると、緑があって赤もあります。
いろんな色がキャンバスに塗られています。
岩も同じで、遠目では単色に見えていても、ちゃんと見れば様々な色の集合なわけです。
それぞれの日に同じ岩を見て感じた感覚から色を決めて、箱を振り続け作品を完成させました。

また、別の課題の話です。
3年生からはキャンパスが市ヶ谷になります。
そこでは「市ヶ谷の課題を見つけてそれを表現しなさい」という課題が出されました。
僕は偽善をテーマにして、市ヶ谷の街を歩き回り、電話をしている人を撮りまくって、その会話を推測して言語化することを行いました。

伝わらない偽善はもはや善意であり、隠れた善意こそ純度100%の善意。


Yellow Mugというユニットを結成して銀座で個展

クリエイティブイノベーション学科にはアーティスト志向の学生とデザイン志向の学生と両極の学生が混在しています。

僕はどちらかというとアート的なことが得意ではなく、デザイン側の人間なのですが、アート側の相方と組んで、" Yellow Mug "というアートユニットを結成して、在学中、個展を開くなどのアート活動を行ってきました。

作成したYellowMugのWebサイトと銀座での展示の様子

映像やWEBデザインの依頼はときどき受けていて、このユニット以外でも教授から映像の依頼を受けて個展を手伝ったりすることもありましたし。
学習塾のWEBサイト改修や、企業向けWebサービスのUIのデザインシステム構築に数ヶ月単位で関わらせていただいたこともありました。


大学在学中のその他の活動


「食の未来予測とキッチンの可能性」共同研究概要

クリンナップ「食の未来予測とキッチンの可能性」共同研究概要
武蔵野美術大学在学生の田村 義希さん、横田 爵巳さんが「食の未来予測とキッチンの可能性」について発表しました。インタビューを通して家庭により全く異なる食事事情が存在することを踏まえ、50個程度の食事のパターンをリストアップ。30年間に及ぶ未来の“ライフスタイルシナリオ”を120パターン作成。食事パターンごとのキッチンと共に実現する、新しい未来のライフスタイルを語りました。

出所:クリナップ×武蔵野美術大学 未来キッチンラボ https://cleanup.jp/miraikitchen/lab/ 



念願の記念祭での1位、物理部

ーー聖学院中高時代のことを教えてください

中高では物理部に所属していました。
高2のときは、部長も務めました。
そして、念願だった「記念祭(文化祭)で1位を取る」という目標も達成することができました。

物理部の公式のパンフレット制作を行なったり、複数の色のバリエーションがあるパーカーをデザインしたりもしました。

記念祭では一人ひとりオリジナルデザインの、バッジ制作の企画を行いました。

イベントへの生徒の参加率を高めるには保護者の参加率を高めるべきと考え、イベントスケジュールを共有する仕組みや、写真を提供する仕組みを考えて実施しました。
デザイン思考やサービスデザイン、システムデザインの発想です。

物理部といえば宇宙エレベーターやロボットやドローンのプログラムなどを行っているイメージがあると思います。
僕も4速歩行ロボットや、記念祭でのペットボトルロケット体験会の実演などはしていましたが、前述したように、仕組みやサービスをデザインするなど物理部っぽくない活動が多かった気がします。

しかし、実はそこが物理部の良さでもあります。
メンバーがそれぞれに好きなことをやることができて、そしてそこに自分の居場所を見つけることができるのが物理部なのです。

高Ⅱ課題研究 優秀賞
田村義希 「Googleより高速な検索を可能にする“HSSearch”」

中高物理部 18年目の継続研究を発表
物理部は壇上で口頭発表を行いました。タイトルは『ペットボトルロケットの研究〜part18~』です。夏期合宿で取り組んだ、自作ペットボトルロケット発射実験は18年目の継続研究となっています。今回は「羽の角度と安定性について」を研究し実際に発射した340発から得たデータを解析しました。発表者は高校部長の田村義希君(高2)でした。練習の成果も出て堂々とした立派な発表で、観客の皆さまからはひときわ大きな拍手を頂きました。

出所: 聖学院中高WEBサイト https://www.seigakuin.ed.jp/news/n32248/


デザインの価値が認められる社会に

ーーこれから先の田村さんのビジョンを教えてください

長期的なビジョンとしてカッコつけるならば、日本の社会全体における"デザイン"の価値を上げることですかね(笑)。

そして、美術系大学出身者のキャリア開発のロールモデルを示し、自分自身も含めてデザイン系の人たちが、デザインの仕事で家庭を支えられる社会の実現に貢献したいと思っています。

まず、短期的な話をすれば、現在勤務する会社における " デザイン "の価値を高めていきたいと思っています。

僕の部署には20名のデザイナーがいます。
それはデザインが重視されているということであり、業務コアとしてデザインの仕事が認められているということです。
他社に比較するとデザインへの理解は深いと思っています。
しかし、それでもまだ誤解されているところが多くあるような気がしています。


やりたいことができる環境に感謝して

ーー最後に聖学院の後輩たちにメッセージをもらえますか?

美大に入学したら、「中高時代に抑圧されていた反動で美大に来た」という友だちが想像以上に多くいました。

その意味で、OnlyOne教育を行う聖学院で思春期の中高6年間を過ごせたことをとても幸せに思っています。
7つ下の弟が聖学院に在学中ですが、今の聖学院もGIC(グローバルイノベーションクラス)など、世間的に見ても新しい取り組みを行なっていると思うので、やりたいことができる今の環境に感謝の気持ちを持ちつつ、自分のやりたいことをどんどんやって欲しいと思います。

大学生、社会人になると、人に求められることをやることがとても多くなります。
中高生の時代に、時間がある中で、自分がやりたいことができるありがたさに気づいてもらいたいと思っています。
そして、これは自戒ですが、大人になっても必要な”やるべきことをやる”力は身につけなければいけませんね(笑)。
それが僕のメッセージです。
(取材:2024年7月)

ーー 田村さん、ありがとうございました。課題制作のお話、卒業制作のコンセプト、とても興味深いですね。社会でのデザインの価値を高めるため頑張ってください。応援しています。

●田村 義希(たむら よしき)さん プロフィール
聖学院中学校・高等学校 卒業
武蔵野美術大学 造形構想学部 クリエイティブイノベーション学科 卒業
卒業制作で優秀賞を受賞
住信SBIネット銀行 UXデザイン部 勤務


「誰一人取り残さない」世界の実現を目指して
聖学院は教育で社会に貢献しています


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