日本という国のルーツが感じられる服作り|#036 緒方 義志さん
聖学院中学校・高等学校卒業
2月に「Life is Better…Yume Wo Katare」の店主、平塚さんの取材の中で、「聖学院中高卒業生って経営者として活躍されている方が結構いるんですよね」という話がありました。
そして、「ファッションデザイナーとして活躍されている、すごいカッコいい先輩がいますよ!」と紹介してもらったのが、ファッションブランド『yoshiyuki』、カバンブランド『ZACARI』を展開する会社を経営されている緒方義志さんです。
今回は、台東区千束にあるショップ『フリウ』におじゃましてお話をうかがってまいりました。
日本独自の服飾文化を、普段着として落とし込む
ーー服や靴やアイテムを拝見させていただいて、すごくこだわりを感じるのですが、緒方さんの服作りのテーマやコンセプトなどお聞かせいただけますでしょうか?
『yoshiyuki』という服のブランドは、日本独自の服飾文化の要素を現代の普段着の中に落とし込んで、日常の中で、日本という国のルーツが感じられるような服作りをしています。
日本の服飾文化といえば着物。
いわば着物が日本の民族衣装なんだと思います。
それなのに、明治になって西洋の文化が入ってくると、決して押し付けられたわけではないけれど、日本人は着物を放棄してしまい、洋服を着ることを自ら選んでいきました。
そして今では、着物は日本人の日常生活における普段着としてはほとんど見られなくなってしまいました。
歌舞伎や将棋、噺家の世界など、職業として、仕事着として着物を着る人はいますが、日常で学校や会社に着物を着ていったら、きっと好奇な目で見られるでしょう。
着物などの日本の服飾文化を誇りに思っている人は多いですし、美しいと思い、未来に残していきたいとみんな思っています。
ところが自分では着ない。
悲しいというか残念というか日本のアイデンティティを放棄してしまっているような気がしました。
そんな思いを持ちはじめたのが10代の後半で、自分では、例えばジーンズに下駄や雪駄をあわせてみたり、羽織をコーディネートしてみたりしました。
しかし、何か少し違和感があるし、思ったほどテンションが上がらないんですね。
私自身はそうした日本らしさというか、日本のカッコいいを普段着の中に落とし込んだものを着てみたいという思いがあったので、それで30歳になる前に、会社勤めをしながら自分のイメージをするような服を作りはじめたというのがブランドを立ち上げるきっかけになりました。
売れそうだから作る、ではなく、意味があるものを作る
それから、デザインとかの話ではなくてこだわりを持っていることがあります。
それは、売れそうだから作る、のではなく、意味があるものを作るということです。
まあ、商売だから仕方がないのかも知れませんが、多くのアパレル企業は商業的な戦略を仕掛けています。
例えば、クリスマスやハロウィンやバレンタインデー、最近はイースターまでキャンペーン化して消費を煽っています。
そうしたイベントを商売のために利用して、必要以上に服を製造して売ること自体が良くないと僕は思うのです。
服飾業界も足並み揃えたかのようにどこもSDGsと言っていますが、SDGs自体が不必要に消費を煽るマーケティング戦略になっているのではないでしょうか?
自由で、いろんな生徒がいる学校
ーー緒方さんが聖学院中高を進学先として選んだ理由を教えてください
はい、それは両親の強い薦めです。
僕は小学生のときからずっとサッカーをやってきていて、地元の仲間たちと地元の中学校に行って、一緒にサッカーをやりたいと思っていたのですが、父は、同じ環境で緊張感なく過ごすのではなくて、中学から新しい環境に飛び込んで誰も知っている人がいない環境でやらなくてはダメだ、という考えだったんです。
母は、地元の中学では五分刈りにしなくてはいけないけど聖学院なら髪の毛を切らなくて良いとか、地元では詰襟の窮屈な制服だけど聖学院ならブレザーだよと言って薦めました
比較的校風が自由で、髪型も自由で、好きな靴を履いて良いと、そういう母の薦めには僕も共感しました。
実際に卒業して思うのは、聖学院には趣味もバックグラウンドも違ういろんな生徒がいたので、地元の中学に進んでいたら自分の視野はこうは広がらなかっただろうなということです。
ーー聖学院在学中の思い出を聞かせてください
基本的には、サッカー漬けの中高6年間でしたね。
楽しかったですよ。
中学3年生のときはキャプテンをやらせてもらいました。
サッカー部の仲間とは今も交流があって、10何代のサッカー部OBが集まったこともありました。
ここ何年かはコロナの影響で実施できていませんが、OB戦もよくやっていましたし、そろそろまたできないかなと期待しています。
在学中、生徒会の副会長を務めていたときがあるのですが、そのときに、学校の制服を廃止しようという提案を行ったんです。
結果的には制服を支持する生徒の方が多くて廃止にはならなかったのですが、その提案をさせてもらえたことが今考えるとすごいなと思います。
聖学院は懐が深いなと。
制服のこともそうですし、自分は何か型にはめられるのが好きではなくて、自分らしさを表現したいと思っているのだと思います。
それは今のファッションデザインの仕事に通じています。
ファッションデザインの仕事をきちんと学校で学んだことはなくて、もちろん聖学院中高でファッションの勉強をしたわけでもないのですが、地元の中学でなくて聖学院に通ったことで、刺激はたくさん受けたと思います。
流行は早いし、ファッションに興味のある生徒も多くて、メンズノンノとかチェックメイトとかの雑誌を友だちから見せてもらって、渋谷行こうぜ、原宿行こうぜ、みたいなノリで街に繰り出していました。
日本の小学生の学生カバンに革命を起こしたい
ーー緒方さんの今年の目標と、長期的なビジョンをお聞かせください
今、僕が一番力を注いでいるのがカバンのブランド『ZACARI』です。
日本の小学生というのはランドセルを持つものと思われています。
それが固定観念になってしまっていますが、実はランドセルの使用が文科省や教育委員会で決められているわけではないんです。
それにも関わらず、誰もがランドセルを背負っているという状況に違和感を持ちます。
もうずっと前からランドセルは小さい子どもにとって、重いし、高いし、使いにくいという意見があるのにも関わらず、それでも相変わらず誰もがランドセルを使い続けています。
みんなと一緒でなければ、変な意味で目立ってしまい、友だちに仲間外れにされたらどうしよう?なんて思いがあるのでしょう。
最近の探究学習などでは、自分で課題を見つけてその解決策を求めてアクションを起こすということを教えているのに、長いものに巻かれていれば安心だよ、みたいな考え方を子どもに示すのは少し違うんじゃないかなと思います。
勝手にそれがルールだと思って思考停止しているところをなんとかしたいと思っています。
通学カバンだって自分で選んでいいんだぜ!ということを子どもたちに気づかせたいですね。
そして、子どもたちだけじゃなくて、親にも気づかせたい。
そうした意味で『ZACARI』の「通学はいのう」を使う子どもを一人でも多く増やすというのが、今年一番の目標です。
長期的なビジョンは、ウチの会社の信条としても掲げていますが、日本らしい文化を残していくことを生涯かけてしていきたいと思っています。
『yoshiyuki』というブランドが日本発信の日本のファッションブランドの代表格になって世界の人に愛されるものにしたいです。
西洋風の洋服だけではなく、日本のファッションがスタンダードに人々の選択肢の一つになるようにしたいですね。
そして日本だけではなく、中国をはじめとするアジアの国々、そして南米やアフリカなど、それぞれの国が自国の独自の服飾文化を継承していく。
今のグローバル社会って結局、西洋化ということなのだと思います。
しかし、もっと多様性を大切にして、面白いところがごちゃごちゃになって、それを共有することで生活や暮らしが豊かになったらいいなと思っています。
誰もが自分のルーツに自信を持って、時代に合わせて進化させていくことをすれば、もっと面白い世界になるんじゃないかな。
これからもずっと、変なやつを大切にしてほしい
ーー最後に、これからの聖学院に望むことをお聞かせください
聖学院って変なやつが多いんです。
いい意味での変なやつのことですが。
人と違う方が、世の中に価値を提供できると僕は思っています。
だから、聖学院にはそうした変なやつを、ずっと大切にしてもらいたいなと思っています。
(取材:2023年3月)
ーー ありがとうございました。聖学院の良さってなんなのか、あらためて理解できた取材になりました。日本らしさを継承すること、これからも頑張ってください。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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