「The story of Seigakuin」【番外編】 &Talk われら青春の運動部|加藤 柚子 先生×武井 貴 先生
加藤 柚子 先生 女子聖学院中学校・高等学校 卒業
聖学院広報センターは、卒業生、在校生保護者対象の広報誌『ASF NEWS』を年1回、6月〜7月に発行しています。
2024年(No.62)のASF NEWSでは、読者からリクエストの多い「運動部」を特集しました。
巻頭特集「& Talk」で、男女聖学院中高バスケットボール部(以下バスケ部)顧問のトークセッションを掲載いたしました。
女子聖学院中高のバスケ部顧問の加藤 柚子(かとう ゆずこ)先生は、女子聖学院中高の卒業生であり、在学中はバスケ部の選手として活躍しキャプテンも務めていました。
今回は、聖学院各校の卒業生を紹介する「The story of Seigakuin」の番外編として、卒業生である加藤先生が登場するトークセッション記事をご紹介いたします。
特集 われら青春の運動部
聖学院中高のバスケ部は一人の教員が27年間、顧問を続けています。
プレーヤーとしても大学までバスケットボールを続けていた武井貴(たけい たかし)先生です。
女子聖学院中高のバスケ部は、母校に教員として戻ってきた卒業生が顧問を務めています。
数年前まで同部のキャプテンだった加藤柚子先生です。
歴史ある聖学院だからこそ見えてくる今と昔、新型コロナウイルスの影響、変わらないもの。
そして歴史を紡いできた卒業生との関わりと今後についてお二人にうかがいました。
かつて一時代を築いた
男子・女子バスケ部
ーー部活動について教えてください。
武井:活動は週4日で、個人のスキルとチームのスキルに分けて練習しています。
個人の練習はシュートやドリブルなどの基礎練習です。
チームの練習は1対1から5対5までの対戦形式で行い、ゲームの中でどう動くかという決まり事の確認なども行います。
水曜日は教職員の会議があり、私が立ち会えないので、学外のトレーナーに来てもらってます。
その日がスキルアップの練習の日になります。
部員数は中高合わせて46名います。
最近の実績でいうと高校は都大会2回戦まで進み、中学は初戦敗退でした。
高校は16点リードしていたのですが、最後の5分で逆転されてしまいました。
心掛けとしては、生徒として「きちんと」していることを重視しています。
身だしなみや生活態度が部活動の成績にもつながってくると思っています。
加藤:男子は部員、多いですね。
女子聖学院中高は高校が11名で中学が13名です。
こちらも週4日の活動になります。
今までの戦績としては中学で都大会出場の経験があります。
練習内容は、個人とチームのスキルアップが中心です。
攻め方(オフェンス)が分からないという生徒が多いので、フォーメーションごとの動きなど具体的なチームプレーも練習しています。
部活動は参加が任意なので楽しんでやってもらいたいと思っています。
「勝つこと」、「技術の向上」、「シュートを決める」、何を楽しいと思うかは人それぞれです。
ただ高校生が試合で頑張りたいと言っているので、今はそこに合わせて活動しています。
試合に勝つためにはまず練習に参加しよう、走って集合しよう、返事をしよう、そういう基礎的なところから徹底し始めています。
武井:部の創設に関する正確な時期は不明です。
ただ少なくとも1920年代には存在した記録があります。
聖学院中高は元々アメリカンフットボール部とかバドミントン部が全国制覇をしている学校で、アメリカンフットボール部を創った先生がバスケ部も創ったようです。
当時は結構強かったという話があります。
加藤:女子聖学院中高バスケ部も、創設の詳しい情報は出てきませんでした。
ただ30年くらい前が一番強かったと聞いています。
東京都で1位になっていて、部員も1学年何十人もいたそうです。
両顧問のプレーヤーキャリアと
運動部における中高一貫校の意義
ーー顧問に就任した経緯を教えてください。
武井:私が教員に採用されたときの募集条件が「バスケ部の指導ができる者」でした。
中学から大学までプレーヤーとしてバスケットボールをしていて、大学院ではアシスタントコーチをしていたので、その経験を生かせると思い応募しました。
そのため1997年の赴任と同時に顧問になり、それからずっと私が指導しています。
最初の頃は自分がやってきたことを生かして指導をしていました。
しかし、それではいずれ自分の体が動かなくなった時に支障が出ると思い、日本バスケットボール協会のコーチライセンスを取得しました。
その過程で強豪校の先生や大学の先生の講義を受け、そこから経験則だけではない指導法に変わりました。
加藤:私の場合は、昨年までバスケ部を見てくださっていた非常勤の先生が辞められたタイミングで顧問になり、併せて指導もすることになりました。
高校現役の時に、当時のコーチから勧められて取った指導者のE級のライセンスはあるものの、実際の指導経験はないに等しいので試行錯誤しながらやっています。
ですので指導法については武井先生にお話を聞きたいと思っていたところです。
ーープレーヤーの時のポジションはどこでしたか?
加藤:私はセンターでした。ですのでドリブルはあまり得意ではないです。
武井:同じくセンターです。
加藤:シュートを打つ数が一番多いので得点源になりますし、私はセンターというポジションをちょっと誇らしく思っています。
武井:個人の得点記録は1試合最大何点ですか?
加藤:50点です。
武井:素晴らしい。私は48点です(笑)。
加藤:中学2年生の時、高校生の試合(6年一貫校は中学生も出場可)に、出させてもらったことがあります。
全員大先輩で敵も味方も高校生の中、プレッシャーを感じつつコートに立ちました。
その緊張が良い方向に働き、いつも以上のプレーができました。
先輩と一緒に試合ができたことも、高校生と張り合えたこともうれしかったです。
武井:中学生が高校生と一緒にプレーすることで力が引き出されることがあると思います。
それが中高一貫校の良いところでもありますね。
生徒を第一に考えた指導法が
生徒の主体性を育んでいます
ーー今と昔の部活動を比べてどのようなところに変化を感じますか?
武井:かつては顧問やコーチが決めた方針や練習方法を、生徒がこなしていく活動が一般的だったと思います。
私もプレーヤー時代はそういう指導を受けてきました。
しかし現在では全国的にそういう傾向は減りつつあると思います。
加えてコロナ禍以降は「プレイヤーズファースト」(※)という考え方が浸透し始めています。
私もやはり、生徒にとって何が良いのかを考えた指導をしなければいけないと思います。
では今の生徒は部活動に何を求めているのか、実際に話を聞くと「試合に勝ちたい」「上手くなりたい」という意見が多く、そこはいつの時代も変わらないんだなと思いました。
また、昔は熱心じゃない生徒も一定数いたのですが、今はどんな生徒もちゃんと練習に参加して、一生懸命練習しています。
その点においては時代が変わったと感じます。
加藤:就任して感じたのは、声を出すのが苦手という生徒が多いということです。
よく考えればついこの前までコロナ禍で声を出すなと言われていた世代なので、急に声を出せと言われても難しいのかなと思いました。
部活動に取り組む姿勢自体は、男子同様一生懸命で、試合前に行う実戦形式の練習では、それぞれが自分の課題を見つけようとしています。
主体的に課題発見をし、向上しようという姿勢があります。
武井:今、練習の内容や部内のことは全部キャプテンや上級生を中心に生徒たちが自分たちで決めています。
私がいなくなっても継続する、持続可能な部活動を目指して10年前からこのやり方を始めました。
今では試合のメンバーも彼らが決めています。
自主的に考えて自分たちで答えを出せるようになったので、やって良かったと思っています。
ただ全てがうまくいくとは限りません。
どうしても練習がマンネリ化することもあるので、外部トレーナーの意見を聞いたり、私からアドバイスをしたりしています。
全ての生徒に成長があり、
その成長を見られるのが顧問のやりがい
ーー部活動としてのバスケットボールの魅力はなんですか?
武井:指導者としては生徒の成長が感じられるところです。
特に男子は「化ける」と言われていて、それまでできなかったことがある日突然できるようになることがあります。
例えば3ポイントシュートが全然届かなかったり的外れだった生徒が綺麗な放物線を描いて決めるようになることがあります。
加藤:生徒の成長はやはりうれしいですね。
自分の実力以上のことができても当の本人は気づいていないことがあります。
そのため「今のプレーとても良かったよ」と声をかけて、生徒が「こういうふうにやれば良いのか」と成功体験に落とし込めるよう意識しています。
それがその生徒の得意なプレーになったり、チームプレーの向上につながったりします。
武井:中学1年生の頃、遅刻が多くて勉強もやる気がなかった生徒が、中学2年生からバスケ部に突然入ってきたことがあります。
最初は鳴かず飛ばすだった彼が何かのきっかけでスイッチが入り、最終的にはキャプテンになりました。
さらに部活での変化が生活や学習面にも波及して、彼は勉強もしっかりするようになり、希望する大学に進学しました。生徒の成長には本当に驚かされます。
ーーレギュラー以外の部員のモチベーションはどのようにケアしてますか?
武井:実戦形式の練習では全員均等にプレーするようにしています。
ただその分、一人ひとりのプレー時間は短くなるので、実際の試合で主力選手を長時間使うと、高校生の都大会残り5分で逆転負けしたように、コンディションを維持できないという問題があります。
そこは課題だと感じています。
加藤 :私は部活動に参加している部員の中から実力順で試合に出しているので、スタメンに選ばれなかった生徒は悔しい思いをします。
でもその気持ちが大事だと思っています。
そのことを伝えつつ、次の大会までに試合に出られるようになるにはどうしたら良いかを一緒に話し合い、本人にも考えさせるようにしています。
そういう生徒ほど伸びますし、次の大会ではスタメンに入れることがよくあります。
その結果、新たにスタメンから外れる生徒が出ます。
その生徒にも同じく「悔しいなら頑張って練習しなさい」と声をかけます。
お互いが高め合える関係を大切にしています。
卒業生との交流と
駒込3校の今後の展望
ーー卒業生と現役の部員、あるいは卒業生同士が交流する機会はありますか?
武井:卒業生同士が連絡を取り合ってバスケをしたり食事に行ったりしているという話をよく聞きます。
加藤:私も現役の時の部員仲間と今でもよく会っています。
在学中一番頑張っていたのが部活動なので、その話で盛り上がります。
武井:毎年記念祭の時に、現役チーム対OBチームで試合をします。
それが高校3年生の引退試合になっています。
昨年はOBチームが勝ちました。
ーー駒込各校での交流も持てそうですね。
武井:コロナ禍の影響などで中断してますが、男子と女子は以前は練習ゲームをしたり、お互いの体育館を貸し借りしたりしていたので、また交流を持ちたいですね。
加藤:良いですね。誰かが見ている中で練習するのは、実際の試合の緊張感に近いので良い機会だと思います。
武井:聖学院小学校にミニバスを教えに行くことなども、できたら面白いか
なと思います。小学生がそれを機会に、サッカーでも野球でも何か運動に興味を持ってくれればうれしいです。(取材日/2024年5月)
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