最高の道を選択するのではなくて、選択した道を最高にする|#065 鈴木 英生さん
聖学院大学 政治経済学部 政治経済学科 卒業
先日、聖学院大学の心理福祉学科の先生から、ご紹介したい卒業生がいますと連絡がありました。
「さいたま障害者就業サポート研究会」に参加した際に、偶然、聖学院大学の第1期の卒業生と知り合いになったのだそうです。
さっそくその第1期の卒業生、ポラスシェアード(ポラスグループの特例子会社)でマネージャーとして勤務されている鈴木 英生(すずき ひでき)さんに連絡をしてお話をうかがってまいりました。
会社をメジャーにするために様々な会合に積極的に参加
ーー聖学院大学の先生から鈴木さんのことを紹介されたのですが、どのような出会いだったのでしょうか?
埼玉県には、埼玉県障害者雇用総合サポートセンターが設置されていて、「さいたま障害者就業サポート研究会」という会が年に複数回、開催されており、セミナーや企業見学会、講習会等が行われています。
今回、その会に参加したのですが、たまたま、聖学院の先生が他の参加者と名刺交換をしている場面をお見かけして、見慣れた” SEIG ”のロゴが見えたので、「あっ、聖学院大学の方がいる!」と思って私の方から声を掛けさせていただきました。
私は「住まい価値創造企業」をキャッチフレーズとする地域密着の総合ハウスメーカー、ポラスグループの一つであるポラスシェアード株式会社(以下 ポラスシェアード)でマネージャーとして勤務しています。
ポラスシェアードは2015年に設立されたポラスグループの特例子会社です。
特例子会社とは、障がい者の雇用を促進する趣旨で設立される会社で、全国では約600社、埼玉県内では約30社設置されています。
企業において、障がい者の雇用を推進することはとても大切なことですが、雇用するには合理的配慮を行う義務があり、それが理由で雇用が進まない場合も少なくありません。
特例子会社は合理的配慮を提供しやすいという点で特色があり、障がい者の雇用の促進と安定化を図るという意味で存在価値のある会社だと思っています。
私はポラスシェアードに配属されて以来、会社の理念に共感し、そしてこの会社をメジャーにしたいと考えて、様々な会合に積極的に参加をし、沢山の懇親会や飲み会に参加、知見と人脈を広げてきました。
「さいたま障害者就業サポート研究会」も積極的に参加をしている会合の一つです。
本業をサポートする業務など90以上の業務を受託
ーー特例子会社ポラスシェアードの業務内容について教えてください
ポラスシェアードはビジネスサポート課とローンサポート課の2課体制であり、私はビジネスサポート課の課長を務めています。
ちなみにローンサポート課には障がい者の在籍はありません。
ビジネスサポート課には現在63名の課員が所属しておりますが、そのうちの46名、70%以上が障がい者手帳を保有しています。
ビジネスサポート課で行っている業務内容は、技術系のサポート業務と事務系のサポート業務とに大きく分けられ、それぞれテクノ係、ビジネス係という係が設置されています。
一般的な特例子会社は知的障がい者の雇用が中心であり、清掃業務や工場等での単純な業務が多いのですが、ポラスシェアードは知的障がい者よりも精神障がい者の方が多いという特色があり、身体障がい、知的障がい、精神障がいの方のそれぞれの割合は、23.9%、13.1%、63.0%です。
ポラスは住宅の会社なので、本業である住宅に関連する業務、CADを使った竣工図面作成、水道積算図面作成、サイディング、クロス材の積算、環境計算書作成といった専門的な業務の補助を含めて、名刺の作成や販促品の管理、販促用WEB原稿の作成や動画編集など90種類以上の業務を、グループ各社から受託して実施しています。
ポラスシェアードのビジネスサポート課は、障がい者の" できないところ " ではなくて、" できるところ " にフォーカスをして仕事に取り組んでいます。
例えば、識字障がいや学習障がいの人もいますが、字を書くことが苦手であってもキーボードのタイピングが尋常でなく速いというケースがあります。
また、集中力が極めて高いという人もいます。
同じ作業を飽きずに続けることができるという特色があるのです。
それから、最近はSNSの動画編集の仕事なども受託しているのですが、動画編集に才能を発揮する人もいます。
一般的に、特例子会社は収益以外の福祉面での貢献を期待されていることが多いのですが、ポラスの場合は、福祉面はもちろんのこと、収益面の業績も求められています。
すなわち、グループのコストとなるのではなく、独立採算で経営できるように収益の確保・向上が期待されていて、この福祉と収益との同時達成が、難度の高い、現在の課題となっています。
アビリンピックに毎年出場
ーーアビリンピックへ出場されているという記事を拝見しました
アビリンピックとはどのような大会なのでしょうか?
アビリンピックは障がいのある方が、業務等で行っている技能を競う大会で、弊社社員は実業務に近い、ワード、エクセル、データ入力、オフィスアシスタント、小売物流ワークといった主に事務系の競技に出場しています。
大会は地方(県)大会、全国大会とあり、地方大会の競技種目で優勝すると全国大会への出場権が得られます。
今年、ポラスシェアードからは、2名の社員※が11月に開催される全国大会への切符を手にしています。(※昨年も2名が、全国大会へ出場)
アビリンピックの大会への参加は任意の立候補制で、社内の参加希望者の中から予選会を行い、上位成績者を出場者としています。
全国大会で勝ち進むと、その先には国際大会があります。
国際大会は、昨年はフランスのメッスで開催され、次回は2027年にフィンランドのヘルシンキで開催されることが決定しています。
国際アビリンピックもオリンピック同様に4年に1度の開催なんです。
日本では馴染みが薄いアビリンピックですが、諸外国においてはとても関心が高いイベントであり、昨年のフランスの大会のときには、学校の修学旅行のルートにアビリンピック競技見学が組み込まれていたと聞きました。
徳島出身の創業者がはじめた南越谷阿波踊り
ーー会社の入り口のところにも掲示されていましたが、南越谷の阿波踊りとポラスとは、どのような関連があるのでしょうか?
実はポラスグループの創業者は徳島出身で、創業者が「ふるさとと呼べる街づくり」「文化の根付く街づくり」をテーマとして開始したのが南越谷の阿波踊りです。
南越谷阿波踊り振興会の主要スタッフの多くは実はポラスグループの社員であり、私も2013年から関わっています。
今年も8/23(金)〜25(日)に第38回になる南越谷阿波踊りがあります。
本場、徳島からの参加もあり、とても見応えのある阿波踊りです。
南越谷の阿波踊りは、徳島、東京・高円寺と共に、日本三大阿波踊りと言われていて、今では70連(チーム)、70万人が参加する大規模なイベントになっています。
さらに、これを100連、100万人のイベントにすることが当面の私たちの目標です。
このイベントにおいて、参加者のよろこびの声を聞けることが、活動の最大のモチベーションであり、この街に住んでいて良かったと思える瞬間です。
しかし昨今は、働き方改革の文脈もあり、若い後継者が育たず、運営スタッフが年々高齢化してきていることを課題に感じています。
アメフト部で活躍した大学時代
ーー聖学院大学の1期生と聞いています
大学時代の思い出と、1期生で良かったところをお聞かせください
高校時代にすごく勉強したわけではないので、本当は思うことはいろいろあったのですが、カッコつけて言わせてもらうと、新設大学ということで、自分たちで様々なことを作り上げていくとこができる醍醐味があると考えていました。
大学が設立された当時は、日本はバブル期の真っ最中であり、売り手市場で就職に困ることもなく、新設大学での経験は短所ではなく長所として語ることができました。
私は高校時代にサーフィンをやっていたので、実は大学に入ったらサーフィン部を発足しようと考えていました。
私の実家は東京の巣鴨なのですが、滝野川の小学校に通い、駒込の中学で学びました。
聖学院中高など聖学院の各学校は私の実家の近所であったので、幼少の頃から情報がインプットされ、知らないうちに聖学院に対して愛着を感じていて、それが聖学院大学を進路として選択した理由にあったのかも知れませんね。
小学校時代の親友が、たまたま聖学院大学に入学していました。
彼はアメリカンフットボールに強い関心があったので、すぐにアメフト部に入部しました。
聖学院大アメフト部は、聖学院高校アメフト部の出身者たちが立ち上げていました。
親友と一緒につるんでいると、自然とアメフト部の仲間との交流が多くなります。
親友やその仲間から「アメフトやらないか?」と誘われて、いつのまにか自然と私もアメフト部の一員になりました。
結局、私の大学生活は、アメフト一色となりました。
アメフト部には聖学院中高OBを中心に、部員が40名以上いて、それなりに強く、リーグ戦でも結果を残していました。
当時の仲間たちとは、今でも付き合いがあって、一生涯の仲間となっています。
思い出深いのは、リーグ戦の大会中の試合前の礼拝で、チャプレンに決まって「勝利のお祈り」をしてもらったことです。
そのおかげで良い成績を残せたのだと思っています。
アメフト部は体育会の団体の一つでしたし、私は性格的にも、いわゆる体育会系の人でした。
ですから、そんな体育会系の性格を活かして、大学卒業後は営業職で働こうと考えていました。
バブル時代の花形職業はなんと言っても営業職だったのです。
それから、父親が建設業を経営していたことがあって、いつか父と一緒に仕事ができたらという思いもあり、住宅関係の企業に目が向きました。
そして何よりも、ポラスには他の会社にはない勢いを感じたことが、就職先として選択した大きな理由の一つです。
ところがポラスに就職したら、営業希望であったにも関わらず、人事部へ配属され、「新卒採用担当」になりました。
私には姉が二人おりますが、姉たちもなぜか人事部だったんですよね。
私の家系には、人事に向いている雰囲気などがあるのかも知れませんね(笑)。
しかし、人事部に配属されたおかげで聖学院大学のキャリアサポートセンターとの接点ができて、聖学院大学の『内定GET講座』では、数年の間、講師を務めさせていただきました。
定年後はサーフィンを楽しみたい
ーー鈴木さんの今後のビジョンについてお聞かせください
近い将来の目標を言えば、障がい者雇用の分野での知見・経験を積み上げて、さらなる障がい者雇用の可能性拡大に尽力したいと思っています。
私は現在、56歳なので、4年後には定年の年齢となります。
定年後は、サーフィンをしながら悠々自適に人生を過ごしたいなと思っています。
大学時代は先ほど話した通り、サーフィンではなくアメフトに夢中になり、サーフィンとは遠ざかっていました。
ポラスに就職して、阿波踊りに関わり出してからは、仕事と阿波踊りが中心の生活となりました。
阿波踊りに関しては、声が掛かれば他所の街のイベントも積極的に手伝っていたので、週末のほとんどが阿波踊りのために使われていたと言っても過言ではありません。
ところがコロナ禍になって、阿波踊りが実施される祭りのほとんどが中止となりました。
そうしたら突然ヒマになってしまいました。
そこで中学時代の友人と、昔ならしたサーフィンを再開するに至りました。
定年退職したら、海仲間と共に、綺麗な海で楽しくサーフィンをしたいなと思っています。
選択した道を最高にする
ーー最後に、聖学院に期待していることや、後輩たちへのメッセージをお願いします
人生は思い通りになるとは限りません。
もちろん、自分もそうでした。
こんなはずじゃない、と思うことはたくさんあります。
しかし、だからと言って、くさってしまっては何もはじまりません。
「最高の道を選択するのではなく、選択した道を最高にする」
私はそんな考え方で、これまで歩んでまいりました。
後輩諸君も、そうした強い意志をもって、これからの人生を歩んでいって欲しいと思っています。
(取材:2024年7月)
ーー鈴木さん、特例子会社、アビリンピック、南越谷阿波踊り、など興味深いお話をたくさんありがとうございました。どれも意味のある活動だと思いました。まだまだこれからの活躍を期待しております。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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