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能登半島地震被災地での炊き出しボランティアのご報告|#057 中込 匡俊さん

聖学院大学 人間福祉学科 卒業

この聖学院公式note『The story of Seigakuin』では、おかげさまで取材対象者の聖学院卒業生をご紹介いただくことが増えてきました。
自己推薦から取材が実現したケースも実はあるんです。

今回は聖学院大学の卒業生の中込匡俊(なかごめ まさとし)さんから「僕を取材してもらえませんか?」というアプローチがありました。

中込さんは2月の初旬に1週間ほど、能登半島地震のボランティアに参加されたのだそうです。
現地に赴いてみると、被災地はまだまだ大変な状況で、ボランティアの手が不足していることを痛感したそうです。
SNSやメディアを通して「ボランティア自粛論」が持ち上がり、情報に翻弄されている感じがありますが、ボランティアの力が求められているといったことや、実際に自分の目で見て、経験したことを記事にしてもらい、多くの人に被災地の現状を知ってもらいたいというのが取材して欲しい理由でした。




熊本支援チームの池田さんとの出会い

ーー最近、能登半島地震の被災地ボランティアに参加されたそうですが、現地のことや参加するきっかけになったことなどのお話をうかがえますか?

僕は一般社団法人の熊本支援チームのボランティア活動に参加してきたのですが、なぜ熊本支援チームと出会ったのかそのきっかけからお話しします。

ときどき読書会に参加しているのですが、『バカになる勇気』(2024, きずな出版)の読書会に参加をしました。
著者は池田親生(いけだ ちかお)さんという、竹に穴を開けてあかりを灯す、『竹あかり』の演出をされている方です。
この読書会は著者も一緒に参加するのですが、池田さんの竹あかりの会社は熊本に所在地があり、池田さんは熊本支援チームの代表をされています。

熊本支援チームは2016年の熊本地震や2020年の熊本南部豪雨災害の被災地支援の活動を行ってきていて、今年の能登半島地震の被災地支援も行っています。
池田さんが読書会のときに能登の被災地の話をされて、ボランティアに来て欲しいと誘われました。

大学在学中に復興支援ボランティアの活動をしていましたし、本当は2月から新しい転職先で勤務をする予定だったのですが、少し勤務開始日を遅らせてもらえたらボランティア活動に参加できると思って相談をしたら、転職先からぜひ行ってきてくださいと言われました。

それで2月の初めに1週間ほど熊本支援チームの被災地ボランティアの活動に参加したんです。

↓池田親生さんが代表を務める熊本支援チーム


能登半島地震被災地でのボランティア活動体験

熊本支援チームのボランティアの主な活動は4つありました。
1つは「支援物資の整理」です。
2つめは「地域のニーズ調査」。
3つめは「崩壊した家屋等の修理」で、4つめが「炊き出し」です。
僕は「炊き出し」のチームに参加をして、昼間は学校で子どもたちの給食の炊き出し配膳を行い、夜は避難所で150〜160人分の食事を毎日作りました。

まだ震災直後の被災地なので、その惨状に唖然とすることがたくさんありました。
ボランティアに参加した直後の避難所の大変な状況はとても印象に残っています。
自衛隊のありがたさ、そして水のありがた味を身に沁みて感じました。
160人分のご飯を作るのはこんなに大変なのかと思いましたが、たくさんの人と一緒に食べる食事の場の温かさに触れて、そしてあたりまえのことがあたりまえにできることのありがたさを痛感しました。

僕が参加した炊き出しチームのリーダーは、大学を休学して参加している25歳の学生で、リーダーをサポートする二人の補佐も20歳と、20歳〜25歳の若い人が中心でボランティアを切り盛りしているんです。

僕は29歳で、最初は気後れしましたが、活動をしているうちに自分にもやれることがあると勇気をもらいました。

炊き出しチームのみなさん、特にリーダーと補佐はとても素晴らしい活躍ぶりですが、聖学院大学でボランティアに携わっている学生ならばきっと同じように活躍することができるし、学生にとっても貴重な体験となるだろうなと思って、春休みや夏休みを利用しての参加を勧めたくて、「僕を取材して欲しい」とお願いするに至りました。


避難所での炊き出しの風景


家屋が崩壊している町の様子

信頼できる情報を探してボランティアを検討してみてください

実際に現地でボランティアをして情報の誤差が生じているということを感じます。

例えば、学校で給食が再開した地域があります。
メディアでもちゃんと「簡易給食」と報道されてはいますが、おにぎりと牛乳と冷凍クレープという決して温かい食事ではないということはあまり伝わっておらず、「給食が再開された」ことだけに焦点が当てられている気がします。

また、これから輪島での炊き出しが開始されるのですが、300人分の食事を2人くらいで作らなくてはならない状況があり、実はボランティアの人手は足りていないのです。
ところが「震災直後の現地にボランティアに行くのは迷惑である」という意見が拡がってしまっているのが現状です。

しかし、実際にボランティアに参加した僕が言えることは、訪問して、実は役に立てることがあるということです。

聖学院大学の学生のみなさんなどには、実際に参加してもらえたらとてもうれしいのですが、物資の支援だけでもありがたいですし、正しい情報にアクセスして実状を理解してもらえるだけでも良いと思っています。

信頼できる情報がどこにあるのか、どの情報を信用して良いのか難しいところですが、僕は熊本支援チームのインスタグラムをオススメします。

↓熊本支援チームのインスタグラム


キャリアコーチングで若い福祉職を支えたい

ーー転職されたとお聞きしました。大学を卒業してからの現在までのお話をうかがえますか?

卒業後は地域に根ざした仕事をしたいと思っていました。
それで、その会社のミッション・ビジョンに共感して高齢者福祉施設に就職しました。
介護士として勤務して、在籍中は新人育成も担当しました。

少し目先を変えたいなと考えて、難病であるパーキンソン病専門の高齢者福祉施設に転職をしました。
ここではブログの担当もさせてもらいました。
とてもやりがいのある仕事でした。

しかし、良いときばかりではなくて、うまくいかず悩んだときもあります。
僕は組織で働くよりも一人で働く方が向いているんじゃないかと思ったりもしました。
でも、じゃあ何をしたら良いんだろう、と思っていました。

今、自分はそうした悩みを相談できる人がいて、そのおかげで乗り越えることができています。
おそらく、同じように悩みを抱えている若い福祉職の人は多いと思っています。
だから自分は、若い人の力になれる、福祉職専門のキャリアコーチングを将来の仕事にしたいと考えるようになりました。

フリーランスのキャリアコーチには営業力が必要だと思うので、営業力を身につけるために営業職の仕事に転職をすることにしました。
それが次の転職先です。


ヴェリタス祭実行委員会に引き継がれている「走るな!」

ーー聖学院大学在学中のことを教えてください。

大学ではヴェリタス祭(大学祭)実行委員、NSO(新入生オリエンテーション)実行委員、震災復興支援ボランティアSAVE、そしてリトリート実行委員の活動をしました。

ヴェリタス祭実行委員会では『ミッション・ポッシブル』という室内企画を担当してたのですが、自分は誰かに相談したり、誰かを信頼して頼るといういうことができない性格なんです。
それでヴェリタス祭の1ヶ月くらい前から、夢中になって寝ることも忘れるくらい準備をしていて、寝不足で、食事もろくに摂らず、水も飲まずに走り回っていたんですね。
そうしたら前日の準備のときに2号館の前で、脱水症状で倒れてしまいました。
当時学生課だったペニントンさんに会うと「お前は俺の英雄だ!」と言ってくれますが、倒れたときは自分が情けなくて涙が止まりませんでした。

ペニントンさんと

2年後くらいにヴェリタス祭実行委員の後輩から、理由はわからないけれど、ヴェリタス祭実行委員会に引き継がれている「走るな!」という掟があると聞きました。
たぶん、僕が倒れたからできた掟ですね。

1年生のときのヴェリタス祭


リトリートで「楽しんでいい」ことに気づけた

復興支援ボランティアチームSAVEでは共同代表を務めました。
ボランティアに関わるようになった直接のきっかけはボラセンの川田さんにスタディツアーに誘われたことです。
スタディツアーに参加して、みんなの優しさに触れ、そしてSAVEに参加をして代表を務めるようになりました。

当時は迷いや葛藤がたくさんありました。
僕は何事にも「やらねばならない」ということに囚われてしまうタイプで、それによって楽しめなくなってしまい、場の雰囲気を壊してしまうことが度々ありました。
それが嫌で、僕が代表のときにSAVEに来なくなってしまったメンバーもいたと思います。

想いが強すぎるのですが、肩に力が入ってしまい、ボランティア活動助成金(現:ボランティア・まちづくり活動助成金)公開審査会の際のプレゼンとかでも何も話ができなくなってしまって、もう一人の共同代表の渡辺さんに任せっきりの状態でした。

そんな自分の状況をキリスト教センターの職員に聞いてもらうと、リトリート※に参加してみないかと誘われました。
リトリートの参加は、僕に「もっと楽しんでいいんだ」と気づかせてくれました。
そして、温かい空間で取り組むことの大切さを思い出させてくれました。

社会人になってからも僕には「やらねばならない」という自分と、「楽しめば良い」という自分の2面性があります。
ときどき「成長しなくてはならない」という強迫観念に囚われてしまうことがあります。
そのときはリトリートを思い出して、肩の力を抜かなきゃって思います。

※リトリート【Retreat】
リトリートとは、学生や教職員が参加する修養会のことです。自由な話し合いやレクリエーションなどのプログラムが実施されます。日常を離れ、美しい自然の中で他者と出会い、新しい自己を発見する豊かな時を過ごします。

聖学院キリスト教センター:https://scc.seigakuin-univ.ac.jp/activity/


能登半島地震被災地の現況に関心を持ってほしい

ーー最後に読者のみなさんにメッセージを

僕が今回、取材してほしいとお願いしたのは能登半島地震の被災地の現況を知ってもらい、ボランティア活動への参加を検討してもらいたかったからです。
学生は今、春休みだと思います。
まだまだ復興には時間がかかると思いますので、夏休みの参加でもやることがあると思います。

被災地ボランティアに関してはいろいろな意見がありますが、信頼できる情報にアプローチして、そして正しい判断をしてもらえたらと思っています。
そうした意味では、繰り返しになりますが僕は情報の入手先として熊本支援チームを推薦します。
(取材:2024年2月)


ーー 中込さん、貴重なお話ありがとうございました。
新しい職場でのご活躍を期待しています。

●中込 匡俊(なかごめ まさとし)さんプロフィール
聖学院大学 人間福祉学部 人間福祉学科卒業(2年次より人文学部日本文化学科より転部転科)
卒業後、高齢者福祉施設での勤務を経て、2024年2月よりメディア関連の企業に勤務
趣味は読書とキャンプ(最近はデイキャンプ)
大学在学中はヴェリタス祭実行委員会、NSO実行委員会、復興支援ボランティア団体SAVE、リトリート実行委員会などで活動


「誰一人取り残さない」世界の実現を目指して
聖学院は教育で社会に貢献しています

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